国土交通省が進めているフィジカル空間の都市をサイバー空間に3次元で再現する都市空間情報プラットフォーム「Project PLATEAU」は、2021年度の新たな実証実験として、社会的要請も高い自動運転やカーボンニュートラルの新テーマに加え、エリアマネジメントの可視化や工事車両の搬入経路シミュレーターといった合計4件のプロジェクトを選定した。
国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルを整備し、オープンデータ化する「Project PLATEAU(プロジェクト プラトー)」は2021年9月17日、2021年度の新たなユースケース開発で4つの実証実験を開始したと公表した。2021年度は社会的要請の高い課題や先進技術をテーマに設定し、スマートシティーの社会実装に向けた実用性の高い実証実験が選定された。
今回選ばれた実証実験は、「太陽光発電ポテンシャル推計・反射光公害シミュレーション」「自動運転車両の自己位置推定におけるVPS(Visual Positioning System)活用」「工事車両の交通シミュレーションVer2」「大丸有 Area Management City Index(AMCI)」の計4件。
基調講演:
3D都市モデル「PLATEAU」が実現するスマートシティ
現実の都市をサイバー空間に再現するデジタルツインの3D都市モデル「PLATEAU」が国土交通省からリリースされ、業界内外で耳目を集めていることを受け、「ITmedia Virtual EXPO 2021 秋」内に新設する「スマートシティEXPO」のオープニング講演として、国土交通省 都市局 PLATEAUのご担当者に、旧来の行政機関のサービスとは一線を画す斬新なインタフェースなども含めた開発意図、都市空間のデジタルツインの活用例、今後の展開などを解説いただきます。
講演動画では、PLATEAUが単なる都市空間の3Dモデルなだけではなく、BIMモデル同様に、都市計画基礎調査のデータを基にした“属性情報”を含んでいる点にフォーカスし、街づくり・防災・人流計測などのユースケース(活用事例)を交えつつ、スマートシティ実現に向けたPLATEAUが有する可能性について提示しています。
※アイティメディアが運営するヴァーチャルイベント「ITmedia Virtual EXPO」とは、インターネットに接続されたPCやタブレット端末などのスマートデバイスから、24時間いつでも・どこからでも、無料で来場できる春と秋の年2回開催している“仮想”展示会。会場では、基調講演、各EXPOで用意された特別セッション、出展社によるセミナー動画の視聴や各種資料・カタログのダウンロードなどが行える。会期は2021年9月30日まで
【本EXPOの配信は終了いたしました】
4件のうち、「太陽光発電ポテンシャル推計・反射光公害シミュレーション」は、三菱総合研究所、国際航業、フォーラムエイト、Pacific Spatial Solutionsが取り組むプロジェクト。建物の屋根面積、傾き、隣接建物による日陰発生など、3D都市モデルのデータを用いて都市スケールでの太陽光発電ポテンシャル推計などのシミュレーターを開発。実験の対象エリアは石川県加賀市で、加賀市とも連携し、都市内で太陽光発電の普及を目的とした施策検討でのシミュレーターの有用性を確認する。
「自動運転車両の自己位置推定におけるVPS活用」は、三菱総合研究所、凸版印刷、国際航業が手掛ける実証実験。カメラ画像から取得した情報と、3D都市モデルの特徴点とを照らし合わせ、自動運転に用いる車両の自己位置を推定するVPSの実用化に向け、静岡県沼津市で静岡県とともに検証を行う。
「工事車両の交通シミュレーション」は、竹中工務店とアクセンチュアが、3D都市モデルを活用した工事車両の搬入経路シミュレーターの実用化を目指す。大阪府大阪市で、地域住民の安全・安心や施工業者の円滑な資材搬入を実現する“建設物流プラットフォーム”の構築を目標に設定している。
大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアを対象にした「大丸有 Area Management City Index」は、PwCアドバイザリー、アブストラクトエンジン(パノラマティクス)、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会が主導し、エリアマネジメント活動のプラットフォーム“AreaManagement City Index”を整備。これまでに無い、まちづくり活動のビジュアライゼーション=可視化で、企業や個人に対してエリアマネジメント参加の促進につなげる。
Project PLATEAUは、国土交通省の都市空間情報プラットフォームを構築すべく2020年度にスタートした国の事業。3D都市モデルは、2次元の地図に、建物・地形の高さや建物の形状などを持たせた3次元の建物モデルを配置し、建築物の名称や用途、建設年などといった属性情報も付与して、都市空間そのものをデジタル上に再現している。
ゆくゆくは日本全国の3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出すことが可能となり、防災、都市計画、マーケティングなど、さまざまな用途で活用されることを見込む。
2020年度には、44件のユースケースを開発。公式Webサイトでは、PLATEAUのデータをダウンロードすることなくブラウザ上でプレビューできる「PLATEAU VIEW」を公開しており、ユースケースも閲覧可能となっている。2020年度の開発ユースケースである全国48都市の洪水浸水想定区域の3D表示モデルも実装しており、津波浸水想定の3D表示モデルや土砂災害警戒区域の2D表示モデルとあわせて表示できる。
国土交通省 都市局 担当者は、「2021年度は“自動運転”や“カーボンニュートラル”といった社会的要請の高いテーマを設定し、3D都市モデルがこれらの課題解決にどのように貢献できるのか、技術実証を進めている。ほかにも、3D都市モデルの優れたビジュアライズの機能を活用したまちづくり活動(エリアマネジメント)の可視化や工事車両の最適なオペレーションを実現するシミュレーターなど、都市が抱える課題を解決するためのユースケースを開発している。防災分野については、2020年度から取り組んでおり、ハザードマップの3次元化による防災意識の啓発や都市全体のリスク分布の分析といった、3D都市モデルがあればすぐにでも活用可能なスケールしやすいユースケースの普及を行っている」とコメントしている。
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