鹿島建設は、開削工事を効率化する土留め工法「頭部固定式二重土留め工法」を開発した。頭部固定式二重土留め工法は、開催工事に適用することで、内部の躯体構築で行われるプレファブ化やプレキャストの多用といった方法を抜本的に見直せ、施工全体の生産性と安全性を高められる。今後は、新工法を建築地下工事にも適用・展開していく見通しだ。
鹿島建設は、開削工事の合理化を目指した新しい土留め工法「頭部固定式二重土留め工法」を開発し、関東圏の土木工事に初めて適用して、有効性を確認したことを2021年10月28日に発表した。
一般的な土留め掘削工法では、掘削の深さが3〜4メートルを超える場合に、切梁(きりばり)やグラウンドアンカー、控え杭などの支保工を用いて掘削工事を行う。しかし、切梁は掘削や躯体工事の支障となり効率的な施工を阻害する他、グラウンドアンカーや控え杭には背面側に広い用地が必要といった課題があった。
さらに、掘削の深さがより大きい場合に用いる「SMW工法」などによる高剛性の土留めは、大型の施工機械が不可欠で、工事の準備に多くの時間がかかり、地中にH鋼が残置されるという問題が存在した。
そこで、鹿島建設は頭部固定式二重土留め工法を開発した。頭部固定式二重土留め工法は、鋼矢板による土留め壁を1〜2メートル程度の間隔で二重に設置し、それらの頭部30〜50センチ程度を鉄筋コンクリートや鋼材などで剛結しラーメン構造にすることで、鋼矢板2枚以上の高い剛性を発揮する土留め壁を構築する。
頭部固定式二重土留め工法を適用することで、開削工事において切梁などの支保工を縮減するため、掘削工事の高速化と躯体構築の合理化を実現し、安全性の向上にもつながる。山留壁に引抜き撤去が容易な鋼矢板を用いるため、工事終了後の撤去にも応じ、環境負荷を減らせる。
具体的には、切梁などの支保工を低減し、より広い作業スペースを確保して、土工事や躯体工事の作業効率と安全性を高める。とくに、比較的浅い掘削ではオープン掘削を行えるようになり、生産性の向上が見込める。
加えて、一般的な鋼矢板の頭部を固定するシンプルな構造で、汎用資材による施工に対応し、鋼矢板を用いるため、地下水位と土質条件による影響が少なく、多様な地盤に適用する。
また、引き抜き撤去が容易な鋼矢板を使用し、頭部固定式二重土留め工法と同等の剛性を有するSMW工法などと比較して、地中残置物や建設汚泥を発生させず、施工後には鋼矢板を撤去するため、地下水の流動を阻害しない。
そして、オープン掘削に分類される在来工法(控え杭式、グラウンドアンカー式)のように土留めの背面側に広い用地が不要で、鋼矢板の打設も小型の圧入機で行えることから、狭いヤードにも適用する。
鹿島建設では、関東近郊の大規模開削工事で、鋼矢板と切梁による従来の工法区間に頭部固定式二重土留め工法を適用し、切梁の縮減を達成した。頭部固定式二重土留め工法を採用した区間では、切梁を完全に省略し、これまでの工法と比べて躯体工事の生産性を高めた。頭部固定式二重土留め工法と切梁を組み合わせた区間では、SMW壁と同等の性能があることも分かった。
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