自然採光を含めて室内全体における光の量を制御するシステムを開発、大成建設らIoT照明

大成建設らは、執務者が感じる明るさの感覚値を考慮し、自然採光を含めて室内全体における光の量を制御するシステム「T-Brightness Controller」を開発した。今後は、新築と改修を問わず、オフィスや病院など、さまざまな用途の建物に新システムを提案していく見通しだ。

» 2021年10月21日 13時00分 公開
[BUILT]

 大成建設は、東京理科大学と共同で、明るさに対する人の感覚値を考慮した照明制御システム「T-Brightness Controller」を開発したことを2021年9月17日に発表した。

執務者の手元で必要な照度を確保する制御方式と比べ年間約11%の省エネ効果

 近年、国内のオフィスでは、低炭素社会の実現や執務者の健康促進を目的に、ZEB(Net Zero Energy Building)やウェルネス(身体的、精神的、社会的に健康で安心な状態)といった要素が求められている。

 さらに、室内の光環境については、部屋の中へ自然採光を届ける「光ダクト」や「採光ブラインド」などの採光装置を用いて自然光を室内に取り入れ、照明の出力を減らして省エネルギーを図るとともに、執務者が健康的に働ける環境の構築が広まりつつある。

 一方、これまで一般的なオフィスでは、執務者が作業を行う机上面のみを対象に照度をセンサーで検知し、室内照明の出力を変化させ、執務者の手元で必要な照度を確保する制御方式が採用されていた。

 しかし、実際には、執務者は、手元だけでなく、自然採光を含めた空間全体で明るさを感じているため、手元のみを対象とした制御では、室内全体で見ると机上面が明るすぎる状態となり、エネルギー削減の余地が残されていた。

 そこで、大成建設は、執務者が感じる「明るさの感覚値※1」を考慮し、自然採光を含めて室内全体における光の量(以下、光量)を制御するシステムであるT-Brightness Controllerを開発した。

従の制御方式とT-Brightness Controllerの検知範囲(左)と制御方式(右)の比較 出典:大成建設プレスリリース

※1 明るさの感覚値:オフィス内の光環境に関する被験者実験から導き出した式を用い、天井面と窓面の光量から人が感じる明るさを数値化した大成建設独自の値。例えば、室内照明だけを用いた際には、一般的な机上面の照度である500ルーメンを満たした光環境では、明るさの感覚値は2.3となる

 T-Brightness Controllerは、室内の天井面に設置したセンサーで「窓面」と「天井面」から得られる自然採光を含む光量を計測する他、同社が実施した被験者実験※2から導き出した明るさの感覚値を維持できるように、室内照明の出力を制御し、常に快適な光環境を提供する。

※2 被験者実験:オフィスを想定した実験空間内を多様な照明条件に設定して、被験者が空間全体で感じる明るさの基準値を300ルーメン(lm)とし、空間の明るさを数値で評価する実験を実施。被験者の評価値と室内における光量との関係から、明るさの感覚値を算出する式を導いた

 加えて、自然採光の光量に応じて、都度、明るさの感覚値を保ち、室内照明の出力を制御するため、照明エネルギーの削減効果も期待されている。一例を挙げると、大成建設が、窓のある室内空間を対象に、T-Brightness Controllerによるエネルギー消費量の変化を検証し、年間のシミュレーションを行った結果、執務者の手元で必要な照度を確保する制御方式と比較して、年間約11%の省エネルギー効果が得られることが判明した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.