「明るい」と感じる感覚を利用、制御技術で照明電力を6割削減省エネ機器(1/2 ページ)

オフィスビルの消費電力の3分の1を占める照明設備。大林組はこうした照明機器による電力消費を大きく削減できる照明制御システムの開発を進めている。制御に「人が感じる明るさ感」を利用しているのがポイントで、照明機器の日中の消費電力を約60%削減できるという。

» 2015年06月04日 11時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と大林組は2015年6月3日、大林組が開発した光環境制御システムを実証導入したオフィスビルの見学会を開催した(図1)。同システムはNEDOの「戦略的省エネルギー技術プログラム」において開発されたもので、オフィス内の照明や窓のブラインドを統合制御し、照明機器を低照度に抑えながらも室内の明るい印象を維持できるというもの。照明機器の日中の消費電力を約60%削減できるという。

図1 見学会が開催された昭和電機 東京支店が入居する神田風源ビルの内部の様子

 制御システムは、複数の魚眼式の輝度カメラで屋内と屋外の明るさを検知し、この情報に基づいて室内の照明とブラインドを統合制御する仕組みだ。ブラインド制御については、まず太陽の角度や天気、周辺のビルからの反射光など、時間や季節によって変化する屋外の明るさを輝度カメラで認識する。次に明るさに応じて、晴天の日は直射日光を遮りつつも室内の天井面に反射させてオフィス内を明るくしたり、曇天の日はなるべく自然光を取り入れたりというように、ブラインドの羽の角度を最適に制御していく(図2)。

図2 ブラインドの制御イメージ(クリックで拡大)出典:大林組

 さらにこうしたブラインドの制御によって得られた自然光を、室内用の輝度カメラで測定する。再び明るさの評価を行い、それに合わせて室内の照明を制御していく。この技術でポイントとなるのがこうしたブラインドや照明の制御基準に、「人が感じる明るさ感」を数値化した「明るさ尺度値」を利用している点だ。

 明るさ尺度値とは、東京工業大学の中村芳樹准教授が開発したもので、モノに当たる光の量を示す「照度」ではなく、人間の目に入る光の量である「輝度」を基準とする尺度だ。照明そのものの明るさだけでなく、壁面からの反射光や自然光などの「人が明るい」と感じる視覚効果も「明るさ」として扱い、システム全体を制御することで、照明を低照度にしながらもオフィスの明るい印象を維持できるという仕組みだ(図3)。

図3 大林組が開発した制御システムの概要 出典:大林組
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