ここで注目したいのが賃貸と売買の業況差です。今期は全14エリア中、愛知を除く13エリアで売買の業況が賃貸を上回り、2年前の2019年4〜6月期が6エリアだったのと比較すると、コロナ禍を挟み大きく変化したことが見てとれます。
売買の堅調さの背景の1つに、外出自粛やテレワークの浸透に伴い在宅時間が長くなったことで、住環境を充実させたいと考える人が増えたことがあります。また、住宅ローン金利の低さも購入の後押しとなっています。コロナ禍の今だからこそ住宅購入をというニーズが生まれ、賃貸から購入へとシフトするファミリー層も増えています。
最後に、賃貸と売買のそれぞれで「供給過多」「供給不足」と感じる物件について不動産店に聞いてみた結果から、特徴的なポイントを紹介します。
賃貸物件で、消費者の需要に対して「供給過多」と感じる物件については『シングル向き』が最も多く62.4%、次いで『古い』『設備が不十分』の順で上位を占めました。供給過多の理由として、「オンライン授業やテレワークが浸透したため大学や会社の近くで一人暮らしする需要が減少しているのに、ほとんどの新築がシングル向きに建てられている」という需給バランスの悪さを指摘する声が目立ちました。また、古くて設備が不十分な物件は更に選ばれにくく、今まで以上に供給過多となっているようです。
売買物件で、需要に対して「供給不足」と感じる物件については『土地』が最多で38.8%、次いで『戸建』『低額物件』という結果になりました。「土地はものすごい早さで売れる」「価格上昇に伴い新築戸建の売却が少なく、掲載されるとすぐに売れる」などという声が多く、消費者の旺盛な購入意欲に対して紹介可能な物件の確保が追い付いていない状況が分かります。
コロナウイルス感染拡大の不安はいまだに続いていますが、ワクチン接種が進みafterコロナの出口が見え始めると、通勤・通学など、これまで控えられていた都心への移動も徐々に再開されるでしょう。
一方、コロナ禍で定着したテレワークは収束後も併用されると思われ、生活の拠点をどこに置くのか、こだわりたい条件は何か、といった住まい探しの価値観はこれまで以上に多様化していくと予想されます。
今後も、不動産市場の新たな変化について、引き続きレポートしてまいりますのでご期待ください。
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