西松建設と群馬大学大学院は、微生物燃料電池式「溶存酸素計測バイオセンサー」の実証実験を群馬県内で実施した。その結果、長期間の連続測定が難しい公定分析を補完する技術として、溶存酸素計測バイオセンサーが有効だと証明された。
西松建設は、群馬大学大学院 理工学府 環境創生部門 教授 渡邉智秀氏や助教授 窪田恵一氏と共同で、2019年に開発した微生物燃料電池※1(MFC)式「溶存酸素計測バイオセンサー※2(以下、DOバイオセンサー)」の実証実験を群馬県内の潅漑(かんがい)用ため池で2020年7〜11月に行ったと2021年3月30日に発表した。
※1 微生物燃料電池:自然界に生息する発電菌を利用して有機物(ヘドロ等)を分解・浄化しつつ発電する電池
※2 溶存酸素計測バイオセンサー:水中の溶存酸素濃度に応じてMFCの発電量が変化する性質を応用したもので、省エネルギーを実現しつつDO濃度を連続して測れるバイオセンサー
内湾・湖沼やダム貯水池といった水域では、水質の適切な評価のために、地域の住民にも分かりやすい指標が求められていた。また、一部の水域では、極端に酸素が少なくなる水「貧酸素水塊」の発生により、水生生物の生育や水の利用に問題が生じていた。
上記のような状況を踏まえ、貧酸素化しやすい水底付近(底層)の水域でも、水生生物が生存できる場を保全・再生する目的で、政府は2016年3月に「水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正」を施行し、底層溶存酸素の水域類型と基準値を新たに設定した。
施行を受けて今後は、底層溶存酸素の常時監視と計測のニーズが高まるとされており、DOバイオセンサーのような微生物燃料電池を応用した計測装置の需要が伸びることが予想されている。こういった状況を踏まえて、西松建設と群馬大学大学院はDOバイオセンサーの早期実用化を目指し、今回の実証実験に踏み切った。
実証実験は、群馬大学桐生キャンパスの近くにある潅漑用ため池(沼)内に、実証試験用に試作したDOバイオセンサーを設置した。実験では、DOバイオセンサーで計測した値は実測値(光学式溶存酸素計による測定値)に近い値を示したことで、良好な分析精度をDOバイオセンサーが備えていることを確認した。そのため、DOバイオセンサーは、長期間の連続測定が難しい公定分析を補完する技術として有効だと証明されたともいえる。
今後は、今回のフィールド実証実験での成果をフィードバックし、DOバイオセンサーの計測精度を高めていく。また、近年のIoTセンサーで採用が進むLPWA(Low Power Wide Area、低価格小容量無線通信)とDOバイオセンサーを連携させ、遠隔監視型の環境モニタリング技術としても活用する見込みだ。
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