西松建設は、農作業における「環境監視システム」の実証実験を開始。実用化すれば、自宅からでも畑の湿度や日照の管理ができるほか、営農者の経験則ではなくデータに基づいた収穫時期の割り出しまで実現する。
西松建設は2018年7月17日、LPWAとIoT技術を活用した傾斜監視クラウドシステムのノウハウを農業分野に転用し、“手軽に実現できる農作業の省力化”を目的とした環境監視システムの実証実験をスタートした。実施先は北海道石狩郡当別町。
今回、実証実験する環境監視システムは、農作業に2つのメリットを生み出す。1つは、自宅での湿度や日照の管理を実現。従来のように、畑やビニールハウスに直接行かなくとも、現場の状況が把握できるようになる。もう1つは、農作業に最適な積算湿度・日照時間の計測が可能。これまでは営農者の経験則で収穫時期を決めていたものが、積算湿度・日照時間を把握することで、データに基づいた的確な収穫時期を割り出せるようになる。
これにより、農業分野の課題とされる営農者や後継者不足による省力化推進をはじめ、農業所得の向上に向けた多品種化の取組みなど、高度化する生産管理技術への対応もIoTによって実現可能とする。
この環境監視システムには、IoTやM2Mに特化した活用が期待される無線通信技術・LPWAを搭載。LPWAとはLow Power Wide Areaの略で、低消費電力で広い範囲をカバーできる無線通信技術である。Wi-FiやBluetoothより通信速度は桁違いで劣るものの、通信距離はWi-Fiが数百m(メートル)であるのに対し、数km(キロ)から数十kmもの広域性を有する。LPWAの中でも最大通信距離50kmともいわれる「SIGFOX(シグフォックス)」を今回採用した。SIGFOXはフランス発のIoTネットワークで、日本では2017年2月から京セラコミュニケーションシステムが事業者として商用サービスを開始している。
一方、環境監視システムのセンサーには、2018年5月に提供開始した傾斜監視クラウドシステム「OKIPPA104(オキッパ・テン・フォー)」のノウハウを応用。乾電池からの給電とすることで、配線不要かつ1年程度であれば電池交換の必要もなく、湿度と日照のセンサーケーブルにつながれた通信モジュールを一度設置すれば、メンテナンスフリーで稼働する。計測データはクラウド上で監視できるほか、あらかじめ設定した計測値を越えると、管理者にメールでアラート通知される仕組みだ。
同社では、今回の実証実験によってシステムの改良を重ね、営農者の勘や経験を「見える化」し、農業分野における新しいサービスとしての実用化を目指す。
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