森ビルは、ビルシステムに対するサイバー攻撃の脅威が高まるなか、メーカーやベンダー6社とともに、独自のビルシステム向けサイバーセキュリティシステムを開発した。従来はIT系のサイバーセキュリティシステムは、ビルシステムとは別の運用がされていたが、これを一元化することで、異常検知の際に迅速かつ効率的に対応できるようになる。
森ビルは2021年9月9日、「ビルシステム向けサイバーセキュリティシステム」を独自に開発したことを明らかにした。システムの導入により、ビル設備の制御とサイバーセキュリティ監視・運用の一元管理を実現し、より効率的で安定的なサイバーセキュリティの監視と迅速な初動対応を通じて、安全で安心な都市づくりとテナントのBCP対策に貢献していく。
近年、PCやサーバなどのIT系システムを標的としたサイバー攻撃が世界的に多発・深刻化している。また、世界的にリモートワークが常態化することで、多くの企業でサイバー攻撃の脅威が高まり、社内システムの監視や防御態勢の強化が求められている。サイバー攻撃の脅威は、PCやサーバで制御する照明設備や空調設備といった制御系機器を有するビルシステムも例外ではなく、経済産業省が2019年に「ビルシステムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」を公開するなど、ビルシステムにおけるサイバーセキュリティ対策は喫緊の課題であるものの、IT系システムに比べて普及が遅れているのが現状。
森ビルでは、安全で安心な都市づくりと、より効率的なビル・施設の管理・運営の実現、テナントのBCP対策への貢献などを目的に、長年にわたり技術研究組合システムセキュリティセンター(CSSC)や産業サイバーセキュリティセンター(ICSCoE)での活動に積極的に参画し、実証実験や共同研究で、ビルシステム向けサイバーセキュリティ対策の推進に尽力してきたという。
【続・座談会】“ICSCoE”の育成プログラム修了メンバーが再結集!コロナ禍でセキュリティ意識はどう変わったか?
サイバー攻撃の脅威がビルシステムにも迫るいま、BUILTでは、ICSCoEの中核人材育成プログラムの修了生で、ビルシステムに関わる業界に属するメンバーを再び招集。前回の座談会から、コロナショックを経て2年が経過した現在、ビルの運用・維持管理を取り巻く環境がどのように変化したか、東京五輪後のニューノーマルを見据えたサイバーセキュリティ対策の方向性はどうあるべきかなどについて、再び意見を交わす場を設けた。
このたび、メーカーやベンダーのビルシステムに関わる企業6社と共同研究を重ね、IT系システム向けサイバーセキュリティ対策技術をビルシステムの監視に応用することで、ビルシステムとサイバーセキュリティシステムの一元管理を実現する「ビルシステム向けサイバーセキュリティシステム」の開発に至った。
新システムでは、これまでビルシステム管理とIT系のサイバーセキュリティ管理で、それぞれ異なる運用体制が敷かれていることが多いが、双方のシステムを一元管理できるように集約。以前のように、インシデントが発生した際、防災センターなどに常駐する担当スタッフとIT専任技術者のそれぞれが連携をとった後、初動対応にあたっていたが、一元管理とすることで、より迅速かつ効率的に対応することが可能になった。
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