森ビル、イーヒルズ、パナソニックは、プライベートLTEと将来はローカル5Gの活用を見据えた通信の実証実験を森ビルなど4カ所で行っている。通信環境を構築すれば、オフィス外の自宅でも、高セキュリティで高速・大容量の通信環境が整いニューノーマルな働き方を後押しするだけでなく、その特性を生かして、さまざまなデータをビルシステムに一元化するなどビル管理業務の効率化やテナント向けの新たなサービスとなることも想定されている。
森ビルとイーヒルズは、パナソニックと共同で、免許不要周波数帯を利用する「プライベートLTE/ローカル5G」を活用した高セキュリティかつ高速・大容量通信の実証実験を2021年12月までの期間、虎ノ門ヒルズなど3つのビルを対象に行っている。実用化すれば、自宅やサテライトオフィスなどからでも、オフィスと同等の高いセキュリティに守られつつ、高速で大容量の通信環境が実現するほか、新たなテナント向けサービスとしての展開も期待されている。
コロナ禍で働き方の多様化が進み、オフィスへの通勤だけでなく、サテライトオフィスや自宅、さらに地方都市での就労やワーケーションなど、さまざまな勤務形態が広く認知されるようになった。一方で通信環境の整備については、個々の社員に委ねられているのが現状で、家庭用や公共のWi-Fiなどを使用するケースも多く、社内イントラネットと同等のセキュリティ環境を担保することが困難となっている。また、脆弱なセキュリティ環境を狙ったサイバーテロもここのところでは、社会問題化している。
今回、3社による実証実験は2021年4〜12月の期間で、虎ノ門ヒルズビジネスタワー内「ARCH」、イーヒルズ本社、長野県茅野市のワークラボ八ヶ岳、パナソニック東京汐留ビルの4カ所で行われている。各社の分担は森ビルとイーヒルズがビルディング企画や業務オペレーション、ネットワークサービス運用、パナソニックがネットワーク装置開発、構内ネットワークの構築と運用をそれぞれ担い、当初提供するプライベートLTEとその先に移行する予定のローカル5Gで、テナントサービスとしての有効性に加え、ビル運営管理システムのDXを検証している。
実証実験の通信網の特長は、利用者はWi-Fiのように知識を持った管理者の設定は不要で、SIM挿入のみで誰でも簡単に高セキュリティを維持したまま自社イントラへの接続が可能となる。ビル運営・管理システムもSIMによる高セキュリティで遅延保証するビル内通信で各種IoT機器とアクセスし、システム操作のタブレット化など、業務の効率化や低コスト化が実現する。なお、基地局については、建物所有者または管理者が設置することができる。
実用化されれば、オフィスビルやワークスペースのインフラとして整備することで、自宅やサテライトオフィスからでも、VPN接続設定などの特別な操作をすることなく、安心・安全な通信が可能となる。また、テナントごとに独立した企業内通信環境を整備できるため、with/afterコロナ時代の新たなテナントサービスとしても期待が寄せられている。
加えて、公衆通信網から独立した自律通信のため、災害時のビル内通信網の確立をはじめ、ビルシステムや防犯カメラ、各種計測センサー、セキュリティドアなど各種IoT機器と接続することで、ビル運営・管理業務のDX推進にもつながる。将来は、ネットワークを地域全体に広めることで、より便利で安心な都市空間といったスマートシティーの実現にも貢献することが見込まれる。
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