マカフィー 佐々木氏「ガイドラインは“マルチステークホルダー”を意識している」
前回の座談会は、経産省のガイドラインが公開された直後のタイミングで開催した。一定の期間が経過した今では、ガイドラインは業界にどのように受け止められているのだろうか。
IPAの情報産業サイバーセキュリティセンター サイバー技術研究室での専門委員としての肩書もあり、中核人材育成プログラムの講師を務めたマカフィー サイバー戦略室 シニア・セキュリティ・アドバイザー CISSP 佐々木弘志氏は、経産省のガイドラインは、同省のCPSF(サイバーフィジカルセキュリティ対策フレームワーク)における一種の実用例として位置付けられているとした。
ガイドラインの優れた部分として、佐々木氏は「“マルチステークホルダー”を意識して作られていること」を挙げる。ビルシステムで発生するインシデントでは、多くのステークホルダーがそれぞれ異なった立場で関わることになる。そうした事態を当初から意識して作成しているガイドラインには、各人が対応すべき範囲を明確に示している。
ビルシステムに限らずだが、サイバーとフィジカルが一体となった「サイバーフィジカルシステム」では、基本的にマルチステークホルダーの環境となる。佐々木氏は、ガイドラインがビルのセキュリティにとどまらず、マルチステークホルダー環境となる他の産業でも、意識を高める影響を与えていることを触れた。
こうしたガイドラインの内容をより分かりやすく解説するために、ICSCoEの中核人材育成プログラム2期生が策定した「解説書」については、森ビルの佐藤氏が「ステークホルダー間のレファレンスとして機能しており、ベンダーとのやりとりで“共通言語”の役割を果たしている」とした。
しかし、ガイドラインを実務に落とし込んだ解説書は、ともすれば攻撃者に利用される危険性を孕(はら)んでいる。ALSOK 熊谷氏は、「悪用を防ぐために公開範囲をシビアに制限したり、問い合わせてくる企業には必要な部分の補足をしたりしている」と、適切な管理下で運用していると説明。ちなみに、「オリンピック施設を建築するにあたり、設計の参考にしたい」との要望もあったとのことだ。
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