大林組がコンクリート受入検査システムにブロックチェーンを活用、改ざんを可視化ブロックチェーン

大林組は、コンクリート受入検査システムのデータを改ざんできないようにする「検査履歴管理システム」を開発し、実証実験を行っている。今後、同社は、今回の実証実験で、コンクリート受入検査システムを対象とした検査履歴管理システムの有効性を確認し、将来的には建設現場内に設けられたさまざまなシステムのブロックチェーンと連携することを検討している。さらに、協力会社との取引でも納品や返却などの情報を共有化し、突合作業を簡素化するなど現場業務の平準化を目指す。

» 2021年06月07日 09時00分 公開
[BUILT]

 大林組は、digglueと協力し、建設現場で利用するコンクリート受入検査システムの検査データをブロックチェーン※1上に記録する「検査履歴管理システム」を開発したことを2020年12月に発表し、検査履歴管理システムの実証実験を進めている。

※1 ブロックチェーン:「ブロック」と呼ばれるデータの単位を生成し、鎖(チェーン)のように連結してデータを時系列に保管するデータベースの技術

改ざんが発生したタイミングを特定可能に

 近年、安全や環境への関心の高まりに伴い、他産業でトレーサビリティーの取り組みが増える中、建設業では施工プロセスのさらなる透明性の確保が課題となっていた。そこで、大林組は、改ざんを防止・検知する機能をコンクリート受入検査システムに実装した。

 しかし、システムは、脆弱(ぜいじゃく)性を突かれ、外部からの攻撃によりデータを改ざんされるリスクがあった。解決策として、同社は、ブロックチェーンの仕組みを利用し、コンクリート受入検査システムのデータを改ざんできないようにする検査履歴管理システムを開発した。

コンクリート受入検査システムおよび検査履歴管理システムとブロックチェーンの関係 出典:大林組

 検査履歴管理システムは、建設現場でコンクリートを受け取る際にコンクリート受入検査システムへ測定値や写真などのデータを記録し、専用のデータベースにアップロードする。同時に、データのハッシュ値※2をブロックチェーンに書き込む。そして、コンクリート受入検査システムのデータから再作成したハッシュ値とブロックチェーン上のハッシュ値を突合(とつごう)し、一致すれば改ざんがないことを証明可能。

 一致しなかった場合には、検査履歴管理システム上に記録された変更履歴とブロックチェーン上のハッシュ値を照らし合わせることで、改ざんが発生したタイミングが明らかになるため、検査履歴の透明性を高められる。

※2 ハッシュ値:あるデータを変換して得られる同じ桁数のデータ。データを一方向にしか演算できないのが特徴で、ハッシュ値から元のデータを復元することはほぼ不可能。また元のデータを1文字でも変更するとハッシュ値は全く違う結果となり、改ざんが行われると瞬時に判別することができる

検査履歴管理システム画面(信ぴょう性確認時) 出典:大林組

【訂正】初出時、記事内容に誤りがありました。上記記事はすでに訂正済みです(2021年6月7日17時22分)

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