計測時間を半減する床コンクリートの“ひび割れ”検出ロボ、結果をCADデータで出力

熊谷組は、自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れなどを自動検出するロボットを開発した。1人で広範囲にわたる計測が可能になるだけでなく、計測員の肉体的負担の軽減や検査時間の短縮がもたらされることが見込まれる。

» 2019年03月26日 08時15分 公開
[石原忍BUILT]

 熊谷組は、自動走行して建物の床面を写真撮影し、床コンクリートのひび割れなどを自動検出する「ひび割れ自動計測ロボット」を開発した。開発にあたっては、倉敷紡績から、連続写真撮影技術、コンクリートひび割れ自動検出技術などの協力を得たという。

ひび割れ図をCADデータで出力し、検査報告書を自動作成

 従来方法による床コンクリートのひび割れなどの検出・計測・記録は、多くの手間と時間がかかり、省力化や精度を向上させる技術が求められていた。また、老朽化が進む構造物の増加に伴い、検査技術の一つとして、コンクリートのひび割れなどを計測する技術は、ますます重要度が増しており、こうした需要に応える形で熊谷組はロボットを開発した。

「ひび割れ自動計測ロボット」本体装置外観 出典:熊谷組

 ひび割れ自動計測ロボットは、自動走行台車にカメラを搭載し、床面を連続撮影する。撮影写真は、走行時に自動取得した位置情報と座標値を照合し、ソフトウェア上で配置・結合して画像を自動で合成。「ひび割れ自動検出・図化システム」で、ひび割れの幅や長さを自動検出し、正確な位置データを持つひび割れ図をCADデータ(DXFファイル形式)で出力する。これを構造図のCADデータと重ね合わせることで、「ひび割れ計測図」として検査報告書へ記載することができる。 

計測の流れ 出典:熊谷組

 操作方法は、計測する区画の開始点と終了点の座標値を入力して、スタートボタンを押した後は、全て自動で走行して計測。現場に設置した自動追尾型トータルステーションが、機体に搭載されたターゲットプリズムを追跡して、位置データを取得する。

 計測中はモニター画面で、計測漏れがないかなどをリアルタイムで確認することができ、万一計測漏れがあった場合や自動走行で計測できない部分がある場合は、モニターを見ながら手押しで測ることも可能だ。

位置データの取得方法 出典:熊谷組
「ひび割れ自動計測ロボット」モニター画面 出典:熊谷組

 ひび割れ自動計測ロボットでカバーできる1区画の大きさは、10×10〜10×20m(メートル)程度。ひび割れ幅は、理論値で0.06mm(ミリ)までを検出する。1枚の写真撮影幅は1400mmで、撮影長さは無制限。

 計測時間については、ひび割れの多さに関わらず、従来手法の人海戦術に比べおよそ半分となった。また、ひび割れ計測図の作成に必要な作業の多くが、自動化されるため、計測員の肉体的負担の軽減、現場検査時間の短縮に伴うコストの低減も見込まれる。

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