三菱地所は、2018年1月に本社を東京都千代田区のオフィスビル「大手町ビルヂング」から同区内にあるオフィスビル「大手町パークビル」内の4フロアへ移転した。新オフィスは、フリーアドレスを採用しABW(Activity Based Working)に対応している他、コミュニケーションを取りやすい環境を構築し、組織をつなぐハブとしての機能を高めている。新本社で、現在も続いているワークプレース戦略は、オフィス勤務とリモートのハイブリッドスタイルなど、afterコロナ後の働く場所の在り方をも例示している。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、国内の企業でも感染症対策として在宅勤務を導入するとともに、これまでオフィスで行っていた業務をテレワークで行える環境を構築する動きが増えている。この動きは、コロナが収束した後でも、在宅勤務やリモートワークの業務形態は継続すると予測されている。しかし、afterコロナにおけるオフィスの活用方法については、効果的な手法が明確になっておらず、さまざまな企業が頭を抱えている。
上記の課題を解消する方策の1つとして、三菱地所では、オフィスをハブとして有効に利用した新しい働き方を行っている。このワークスタイルについて、三菱地所 ビル営業部 FMコンサルティング室長の竹本普氏は、2021年2月22日〜3月1日、オンラインファーラム「ファシリティマネジメント フォーラム 2021」で行った講演「ニューノーマル時代のワークプレース戦略と三菱地所本社での取り組み」で紹介した。
セミナーの冒頭、竹本氏は、「新型コロナウイルス感染症の影響で、オフィス勤務とリモートのハイブリッドスタイルが当たり前になる」と提言。
その理由について、「リモートワークは、通勤時間がなくなるといったメリットがあるが、オンとオフの切り替えがしにくいや集中力が続かないなどの短所も存在し、業務効率に悪影響を与える。コミュニケーションの総量も減少し、採用活動に代表されるようなオフィス業務にも対応できない」と指摘した。
テレワークによるコミュニケーション不足は、企業経営に必要な人、モノ、情報、時間の管理を難しくする事態も招くという。こういった危険性を竹本氏は「遠心力のリスク」と表現した。
遠心力のリスクは、目標に対して経営資源を集中させ、価値を生み出すといった企業活動を阻害し、優れたサービスや製品を顧客に提供することを困難にする。遠心力のリスクを回避するには、センターオフィスのコア機能を高度化させ、求心力を高めるハブ拠点にする必要がある。その一例として、竹本氏は三菱地所の本社移転後における働き方を説明した。
三菱地所は、2018年1月に本社を東京都千代田区のオフィスビル「大手町ビルヂング」から同区内にあるオフィスビル「大手町パークビル」内3〜6階のフロアへ移転した。新本社の特徴は、4フロアの中に各階をつなぐ内部階段を設け、そこで働く人が自由に移動できるようになっている点だ。内部階段での移動は、働く人の運動不足を解消する役割も期待される。部長職を含む社員の座席は、フリーアドレスを採用し、ABW(Activity Based Working)の考え方を基本に、仕事の内容や状況に応じて適したワークプレースを選べる。
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