「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(以下、BIMガイドライン)では、実施設計段階から施工図を作成すると記述されている。この点について、どのように対応したのかを改めて考えてみたい。
設計〜施工のBIM連携をしない場合には、実施設計の段階で施工図を作るためには、設計の一般図をベースに施工図を作成することになる。しかし、この段階で施工業者が決まっていない場合も多く、実施設計より詳細度の高い施工図を、この段階から作成することは困難なので、施工図を作成するための準備作業や、施工段階での問題点解決のための検討を進める程度にとどまってしまう。これが下図内、1のパターンである。
当社でのBIMの全社展開は、設計BIMを先行させ、その次に施工BIMに取り組んでいる。その理由は、設計BIMデータを利用して施工につなげる仕組みがなければ、現実的に施工図をRevitで書くことは難しいと考えたからである。この設計〜施工の連携ルールに基づいた実施設計作業があるおかげで、施工図の作成作業が軽減されると考えている。この連携事業では、当社で開発した施工図作成の仕組みをフジタに検証してもらい、成果を出すことができた。
この連携ルールによる設計〜生産・施工のデータ連携が現時点で最も進んでいるのが構造設計である。構造設計は、鉄骨工場への鉄骨モデルの連携と、基礎施工図のための基礎モデルの連携を行っている。さらに、構造モデルの基礎・鉄骨モデルは、見積部門にも連携しているので、躯体の連携では、まさに要(かなめ)の連携であると捉えている。
こういった連携ルールがきちんと定められているからこそ、各部分での業務効率が上がる。このためには、実は構造部門が連携ルール通りデータを作成するということが鍵で、それができるからこそ次工程の連携にメリットが生まれる。つまり前工程の構造部門が、生産・施工の連携ができる精度の高いデータを作っていることが重要で、その作業こそが、設計段階での施工図作成に当たると考えている部分である。ただ、構造部門の負荷を増やさないことも不可欠で、チェックルールなどを使って、負担をできるだけ増やさず、精度を上げる方法を模索している。
工場の情報加工の時間は、こういった連携作業を行っていない従来の場合は104時間と予測されるが、今回の作業では86.6時間と、17%の削減を達成した。その中で、本体鉄骨の入力時間は、従来作業では24時間掛かるところ、半分の12時間で作業が終わった。本体鉄骨は構造モデルに入っているが、雑鉄骨や工事関連部材など構造図に入っていない部材もあるので、こういった結果になったが、さらに削減効果は期待できる。鉄骨製作機械との連携は、まだ検討中であるが、こういった生産連携にも連携効果を波及してゆきたい。
基礎工事のデータ連携については、設計のRevitデータをそのまま使って、施工図データを作った。本来はフジタで作業するべきだが、当社で作った連携ルールを検証するために、今回の作業に限っては、大和ハウスの施工図チームが作業を担当した。大和ハウスが作成した基礎躯体図データはフジタにそのまま渡し、バーチャル施工に役立てた。ただし、地上階の施工図については、フジタが大和ハウスの意匠モデルと連携して作成を行った。
連携ルールは、単にモデルの仕様に関する決まりごとではなく、施工図として要求される作図にも対応できていることが重要である。将来はBIMモデルだけで、図面が必要なくなる時代が訪れるかもしれないが、当面は図面の作成は欠かせない。ただ、それは、従来の作図方法に拘るのではなく、モノづくりのために必要な情報を絞り込み、BIMの特性を生かした図面であることが欠かせないことだと考えている。
基礎躯体に関しては、従来の2次元による作図作業と総合図作成で、45時間を要するところが、この連携では27時間と40%の削減が実現した。削減できた項目は、モデルの活用による元図面の作成、寸法・符号の入力、フカシモデルの作成などである。
もし、こういった連携ルールがなく、1からRevitで施工図の作成を行った場合は65時間もかかり、従来作業より45%ぐらいも作業時間が増えると推察する。
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