連携事業の施工においては、フジタにさまざまな取り組みを行っていただいた。本稿ではこのうち、3つにポイントを絞って説明をする。
その1つは、BIMモデルを活用した施工計画の作成である。施工ステップ図は、既にさまざま場面で活用されている手法であるが、施工段階ごとに3Dモデルを作ることで、施工計画・施工状況が分かりやすくなるものである。この作成方法も意匠・構造モデルなどと連携しながら、作成できるようにしている。
実験的な試みでは、工場で作成した鉄骨製作モデルを用いて、鉄骨施工計画モデルを作った。仮設足場の動線や墜落防止措置、その他の安全設備までも作成し、バーチャル巡視を試してみた。これらの結果を実際の現場に反映することにより、より徹底した安全管理につながると感じた。
次に、BIM 360を活用した承認フローである。例えば、メーカーの施工図・製作図のチェック・承認作業は、2次元データを印刷して赤ペンチェックをしている。この赤ペンチェックや修正作業、承認作業といった処理をメールや図面の郵送などで行っている。これらの作業をクラウド化し、レビューや承認機能を使えば、施工図チェック・承認における事務処理的な作業が効率化されるというものである。
今回の検証では、一つの工種での作業で、約40%の効率が上がると予測されている。これらの作業は何度かチェックバックの繰り返しが必要であるし、チェックが必要な工種も多いので、実際にはもっと大きな成果が得られると期待できる。
3つ目は、バーチャルハンドオーバー(VHO)である。VHOとは、施工者が実際の建物の引き渡しより前に、BIMモデルを引き渡してしまうものである。VHOは、施工者と設計者や発注者との間で建物工事に対して合意形成をするためのプロセスであり、とても重要な位置を占める。
VHOは共通データ環境としてのBIM 360を活用して、3段階のレベルに分けて進めた。3段階とは、1.納まり、2.内装(色決め)、3.引き渡し(維持管理情報)であり、このように段階的に進めていくことで、バーチャル空間でも発注者が納得する合意が得られるようになる。
今回は、ホテルの客室部分に対するVHOに取り組んだ。第1段階は、設備を含めた納まり調整モデルを作り、窓やコンセントの位置、天井内の設備配管の納まりなども確認し、発注者の指摘に対する回答をBIM 360上で行った。
第2段階は、内装確認(色決め)である。ホテルでは、実際にモデルルームを作って内装確認するケースが多いが、精度の高いレンダリングによって、内装を決めることができれば、モデルルームやモックアップの作成・検査といったコストや手間を減らすことも可能になる。
さらに、第3段階では、維持管理に渡すための属性情報を確認し合い、「スムーズに維持管理に渡せるモデルか」「情報に不備がないか」といった確認を行う。こういった維持管理連携についても、機会があれば解説したいと考えている。
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