三菱地所が大手町でコロナ対策を取り入れた帰宅困難者受け入れ訓練を実施産業動向

三菱地所は、ソーシャルディタンスを保ちながら1000人弱の帰宅困難者を受け入れできる大手町パークビルディングで、新型コロナウイルス感染症陽性疑いの体調不良者2人を含む帰宅困難者23人の受け入れを想定した訓練を行った。

» 2021年03月11日 07時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 三菱地所は2021年3月9日、東京都千代田区の大手町パークビルディングで、感染症対策を取り入れた帰宅困難者の受け入れ訓練を行った。

 会場では、三菱地所プロパティマネジメント 常務執行役員 村田仁氏が感染症対策を取り入れた帰宅困難者受け入れ訓練の概要を紹介した。

体温が37.5度以上で体調不良者と判別

 三菱地所は、東日本大震災以降、帰宅困難者受け入れに関する計画の構築と環境の整備を進めてきた。しかし、従来の帰宅困難者受け入れ方法では、コロナ禍で求められる感染症対策を図ることが難しいと考え、コロナ禍における帰宅困難者受け入れプランを作成した。今回の帰宅困難者受け入れ訓練は、このプランにおける問題点の洗い出しと、より実効性のある計画を策定することを目的に掲げた。

 当日の訓練では、東日本大震災クラスの地震が発生後、建物の一時診断が終了し、施設内に人が残留することが可能だと明らかになり、帰宅困難者受の受け入れ体制が整ったビルで、交通機関の全線停止により生じた帰宅困難者の受け入れを行うことを想定した。帰宅困難者は23人で、内訳は、体調良好者が18人、新型コロナウイルス感染症陰性の体調不良者は3人、新型コロナウイルス感染症陽性疑いの体調不良者は2人を仮定。

建物の入り口に設けた受付で、防護服を身に着けたスタッフが帰宅困難者を検温

 訓練の流れは、まず建物の入り口に設けた受付で、防護服を身に着けたスタッフが、帰宅困難者の体温を測るとともに問診票の記入を促し、問診票の回収と確認の上で、体温が37.5度以下の人を体調良好者と判断して、帰宅困難者グッズを渡し施設内に設けた体調良好者用の待機場所に誘導した。帰宅困難者グッズの内容は飲料水、カロリーメイト、マスク、靴入れの4点。

 一方、受け付けでの検温で体温が37.5度以上だった人は、作業員が体調不良者と判別し、抗原検査ブースに案内した。唾液を用いた抗原検査で、新型コロナウイルス感染症が陰性だと判明した人には帰宅困難者グッズをあげ、施設内に設置した陰性体調不良者の待機場所にガイド。抗原検査とは専用キットを使用し唾液などのタンパク質を抗原に患者が特定のウイルスに感染しているかを診断する手法で、会場で利用した専用キットの所要時間は15分。

抗原検査ブースで専用の検査キットを使用する帰宅困難者

 陰性体調不良者の待機場所では、あらかじめ配置された警備ロボット「SQ-2」が体調不良者を見守り、体調不良者は症状が悪化した際にはSQ-2を介して施設内の防災センターに常駐する職員とコミュニケーションがとれる環境も整備された。

SQ-2を介して施設内の防災センターに支援を求める陰性体調不良者
三菱地所プロパティマネジメント 常務執行役員 村田仁氏

 体調不良者と体調良好者の待機ブースはいずれもプラスチック製のパーテーションで区切られた他、各ブースは1人あたり6平方メートルの離隔管理が従業員によりなされ、密集が回避された。

 また、抗原検査で、新型コロナウイルス感染症陽性疑いが発覚した人は帰宅困難者グッズを渡し車椅子で建物外のスペースに運ばれた。

 三菱地所プロパティマネジメントの村田氏は、「今回の訓練では、新型コロナウイルス感染症陽性疑いの帰宅困難者を施設外のスペースに移送したが、夏や冬など温度環境が厳しい時期では、対象者が外に居続けることは難しいと考えており、屋内で管理可能なスペースを用意することも検討している」と語った。

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