過去最高の売上高158億円、JTOWERの通信シェア新事業戦略「屋内5年で2000件と屋外鉄塔3万本」産業動向(1/3 ページ)

複数の通信キャリアがネットワーク設備を共有する「インフラシェアリング」を展開するJTOWERは、2024年度の売上高で過去最高となる158億円となった。2025年度からの事業戦略では、屋内向けは今後5年間で、現在の約3倍となる累計2000件の導入を目標に定めた。屋外の鉄塔では、日本国内の大型鉄塔のうち、共用可能とされる約6万本の半数となる約3万本の運用体制を構築する。

» 2025年06月30日 09時43分 公開
[加藤泰朗BUILT]

 通信設備のシェアリング事業を手掛けるJTOWERは2025年6月6日、2025年度戦略発表会を開催した。登壇したのは、代表取締役社長の田中敦史氏、2025年1月にJTOWERを傘下に収めた米インフラ投資会社DigitalBridge(デジタルブリッジ) Managing Director 兼 JTOWER 社外取締役のウィルソン・チュン(Wilson Chung)氏。

屋内外で着実な成長を見せるシェアリング事業

JTOWER 代表取締役社長 田中敦史氏 JTOWER 代表取締役社長 田中敦史氏 写真は全て筆者撮影

 2024年度の売上高は、建物内の電波環境整備にアンテナや配線、中継装置などの設備を共有する「屋内インフラシェアリング(IBS)事業」の堅調な拡大と、大型鉄塔の屋外タワーシェアリング事業の寄与で、過去最高となる158億円を記録した。

売上高の推移。2024年度は過去最高の158億円 売上高の推移。2024年度は過去最高の158億円

 IBS事業は、導入済み物件数が2025年3月末時点で4G/5Gを合わせて680件に到達。代表取締役社長の田中氏は「インフラシェアリングという手法が社会に広く一般化しつつある」と好調な理由を話し、着実な成長ぶりを強調した。

屋内インフラシェアリング(IBS)導入物件数の推移(2025年3月末時点で680件に到達) 屋内インフラシェアリング(IBS)導入物件数の推移(2025年3月末時点で680件に到達)

 1物件あたりの平均参画キャリア数を示す、「テナンシーレシオ」は初めて3.0に達した。田中氏は「グローバルでも実現している企業はほとんどない」と自社の競争力をアピールした。

IBSのテナンシーレシオの推移(3.0に到達) IBSのテナンシーレシオの推移(3.0に到達)

 IBS事業の2024年度実績では、「LaLa arena TOKYO-BAY」「GLION ARENA KOBE」「エディオンピースウイング広島」といった大規模アリーナへの導入をはじめ、「三井ショッピングパーク ららぽーと安城」での35%省電力型5G共用装置の初採用、「東京ミッドタウン八重洲」での全館5G通信環境の整備などがある。導入先からは、「必要最小限の機器で安定した通信環境が確保でき、コスト削減にもつながった」などの評価も寄せられている。

2024年度にIBSを導入した主な大規模アリーナ 2024年度にIBSを導入した主な大規模アリーナ
5G環境整備を進めた先進的な導入事例 5G環境整備を進めた先進的な導入事例

 屋外タワーシェアリング事業では、NTTドコモから取得した7232本の鉄塔と新設130本を加え、計7362本を運用している。約3年にわたって進めてきた鉄塔移管が完了し、2024年10月には静岡県内でNTTドコモと他キャリアによる共用運用も始まった。

2024年度の屋外タワーシェアリング運用本数(合計7362本) 2024年度の屋外タワーシェアリング運用本数(合計7362本)

 非キャリア領域にも進出し、風況観測用ドップラーライダーの設置、高頻度取引(HFT)を行う金融機関向けの通信インフラ構築などを手掛けた。2027年度に横浜市郊外で開催する「国際園芸博覧会」で、会場全体の通信環境整備を担う事業者に選定され、屋外の領域が広がっている。

屋外タワー共用利用の進捗状況 屋外タワー共用利用の進捗状況
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