日立システムズは、5Gの普及を視野に入れ、独自の暗号化処理でプライバシーを保護し、専用回線ではなくインターネット回線やクラウドを活用することで安価に4Kや8Kなどの高精細な映像を伝送するサービスをスタートさせた。主な用途としては、自治体のカメラを用いたインフラ設備点検やATMや店舗の監視、遠隔医療などでの活用が見込まれ、同社ではIoTプラットフォーム「Lumada」と連携した5Gのワンストップソリューションと位置付けて、2025年度末までに累計25億円の売上を掲げる。
日立システムズは2021年2月、5Gネットワークの普及や映像技術の進化を踏まえ、従来のような専用回線や閉域網ではなく、インターネット回線などやクラウドを利用してコストを抑えつつ、特殊な暗号化処理技術で高精細な映像をセキュアに伝送し、保管・検索・閲覧できる「セキュア映像通信サービス」の提供を開始した。
セキュア映像通信サービスは、5Gなどの次世代無線通信技術を活用したワンストップソリューションの一つとして、特殊な暗号化処理を行うためのプログラムを搭載した監視カメラなどのエッジデバイス、デバイスで撮影した映像を暗号化して5Gやローカル5G、Wi-Fi6、sXGPなどのネットワークを通じたリアルタイム伝送システム、暗号化した映像の復号と保管・検索・閲覧が可能な映像管理システムがセットになっている。
高速・低遅延・同時多接続の特徴を持つ5G通信技術は、世界的に注目されており、国内でも、2020年度から商用サービスが開始した。また、企業や自治体などが建物や敷地内に限定して利用できるローカル5G無線局の免許交付も始まり、建設現場のデジタル化、交通機関での映像監視など、さまざまな分野で活用が期待されている。
なかでも、映像監視分野では、安心・安全な社会づくりの観点で、カメラ映像の高精細化などと併せて、さらに活用の幅が広がることが予想されている。しかし、高精細な映像のリアルタイムな伝送が可能となる一方で、セキュリティを担保するためには、専用回線や閉域網などを導入するか、または公衆網で利用する場合は、映像の暗号化処理などが必要になる。コストを抑えるためには、公衆網の利用が適するが、暗号化処理による遅延が発生するため、交通インフラなどをはじめとする公共分野や医療分野など、プライバシー保護のためにセキュリティの担保が必須となる分野では活用が難しいという課題があった。
こうした背景の下、日立システムズは、4Kや8Kなどの高精細なカメラで撮影した映像を公衆網やクラウドなどを活用してコストを抑え、特殊な暗号化処理技術によりセキュアに伝送し、保管・検索・閲覧を可能にする「セキュア映像通信サービス」を提供するに至った。
サービスのセキュリティは、米国のパートナー企業が特許を取得している特殊な暗号化処理技術(AES256による暗号化※1)をベースに、日立システムズ独自のプログラムをカメラに搭載することで、高精細な映像でも暗号化処理の遅延が少ない映像通信が可能になる。そのため、プライバシー保護が重要な場所での映像通信・管理においても、専用回線や閉域網などを利用せず、公衆網とクラウド、特殊な暗号化処理技術の組み合わせで、低コストかつセキュアな映像の伝送が実現する。
※1 AES256:米国国立標準技術研究所(NIST)が政府の標準暗号方式として選定したAES(Advanced Encryption Standard)のうち、256ビットの暗号鍵を用いる方式
また、映像の復号から保管・検索・閲覧が可能な映像管理システムや高精細カメラの調達などを一体的に提供することで、運用面も含め、ユーザーのニーズに合った映像管理システムの導入を支援する。
セキュア映像通信サービスの主な用途としては、公共分野などで、例えば、現状は街中の電柱などに取り付けた監視カメラの映像管理で、映像を記録したカード型の記録媒体を人手で定期的に回収や交換を行っているような場合は、セキュリティを保持しつつ、映像データをリアルタイムに伝送することが可能になり、プライバシー対策や作業負荷、運用コストの低減につながる。
救急医療の現場でも、ドクターヘリなどで救急搬送中の患者の様子やケガ・病気の症状に関する高精細な映像を撮影し、受け入れ先の病院にセキュアかつ低遅延で送ることで、事前に受け入れ準備を整えたり、迅速で適切な診断・処置が実現する。
今後、日立システムズは、サービスを拡販するだけでなく、日立の先進的なデジタル技術を活用したLumadaソリューションとの連携によるDX推進も含めて、ローカル5Gワンストップソリューションとして、さまざまなサービスを展開し、2025年度末までに累計25億円の売上を目指すとしている。
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