次に、建築BIMプロジェクトの基本的な戦略を定めた。1つは、意匠・構造・設備の設計・施工の全段階で、Revitを中心に作業を行うこととした。Revitであれば、意匠・構造・設備が同一の環境で作業できる。しかも、BIM 360の“クラウド・シェアリング”であれば、意匠・構造・設備がリンクしたままの状態で、複数のメンバーが同時に設計作業を行える。例えば、設備の図面は、意匠の担当者には理解しにくい。しかし、同じソフトを使っていれば、操作方法は基本的に変わらないので、モデル自体を確認し、そのモデルからどのように図面を作成しているのかが容易に把握できる。さらに、設計・施工の連携でも共通のソフトであれば、シームレスな連携が可能となる。
設備の設計段階でのRevitの活用も、当社では、まだ始まったばかりであるが、今回は、設計〜施工の連携も、実施することにした。これは、我々にとっても、大きなチャレンジだったが、設備工事を担当したフジタと、設備サブコンとして参加していただいた新菱冷熱工業のおかげで、なんとか実現することが叶(かな)った。
2つ目は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴うテレワーク環境の中で、BIMプロジェクトを実施するためには、共通データ環境であるBIM 360の活用は不可欠となった。50人以上のメンバーが、リモートでデザインレビューを行うためには、クラウドによるワークシェアリングだけでなく、レビューや干渉チェック・質疑応答などを、全てBIM 360上で実施した。
3つ目は、意匠・構造・設備以外のBIMデータの連携では、Revitのネイティブデータで連携するようにした。Revitのネイティブデータ連携とは、IFCなどの共通フォーマットを使わず、Revitと連携するソフトと直接連携する方法である。今回連携したのは、工場の鉄骨製作情報加工を行ったデータロジックの鉄骨専用CADシステム「REAL4」や環境シミュレーションの3次元熱流体解析ソフトウェア「WindPerfect」、維持管理システム「ARCHIBUS」などである。直接連携させることで、データ連携のための変換品質や効率性が高くなる。実務においては、変更などのたび、頻繁に連携が生まれるので、変換の時間や品質は重要なポイントである。
4つ目としては、BIM標準の共有である。今回の連携事業に関連する企業には、全てBIM標準のルールや運用方法を共有した。BIM標準を共有するだけでなく、あらかじめ作っておいたBIMモデルも連携したことで、シームレスにBIM情報を横展開することが可能となった。
そもそも、違う方針によって作られたBIMモデルが、効率的に連携できるわけがなく、そのようなモデルは単に3次元の干渉チェックぐらいにしか使えない。例えば、設計のBIMモデルをベースに施工図を書くには、そのためのルールをあらかじめ定めておいた上で、ルールに従って作業を行わなければ、生産性が上がるわけがない。日本には共通のBIM標準がない。このことが、日本のBIM普及・推進の大きな阻害要因になっている。
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