澤部氏は、災害ダッシュボード4.0に実装された帰宅困難者受け入れ施設用の受付システムの説明で、「首都直下地震により大丸有エリアで発生する帰宅困難者数は、平日15時頃に発災の場合、約4万2000人に達すると推定している。そういった事態に直面した時、千代田区と帰宅困難者の受け入れ協定を締結した三菱地所を含むビル事業者は、同区の要請に基づき、管理する建物を帰宅困難者の受け入れ施設として順次開設していく。受け入れ施設では、避難者数と必要な備蓄物資の把握などを目的に、帰宅困難者がチェックインするにあたり、氏名などを名簿で管理する必要があり、受付業務の効率化は課題だった。また、従来の災害ダッシュボード3.0では、施設内のライブカメラで取得した映像を基に、スタッフが帰宅困難者受け入れ施設の利用者数を目視で調べ、各施設の混雑度を割り出し表示していたため、帰宅困難者の正確な数が分からなかった。さらに、これまで従業員により対面で行っていた帰宅困難者の受付は、コロナ禍では、新型コロナウイルスの感染リスクを考慮しなければならなくなった。解決策として、受け入れ施設の利用状況を見える化し、非接触でスムーズに受付を進められる帰宅困難者受け入れ施設用の受付システムを開発した」と経緯を語った。
帰宅困難者受け入れ施設用の受付システムを使用する手順は、まず帰宅困難者が、受け入れ施設内に貼られた入場用のQRコードをスマートフォンで読み込み、専用のフォーマットに氏名や住所などの個人情報を入力する。次に新型コロナウイルス感染症に関するアンケートに答えることで、チェックインが完了。退館する際は、退出用のQRコードを読み込めばチェックアウトできる。
帰宅困難者がインプットしたデータは、専用のシステムで施設別や満空率、利用者数数、男女別、年齢別にグラフ化されるため、各施設での帰宅困難者の受け入れ状況を確認しやすい。さらに、災害ダッシュボード4.0で表示する受け入れ施設の混雑度情報にも自動で反映されるため、入力業務の手間が減る。
「将来的には、受付システムに入力した情報を千代田区が管理する帰宅困難者のデータベースに集約できる仕組みを構築し、帰宅困難者の安否確認と照会に使えるようにする。また、医療関係者が、受け入れ施設内の仮救護所や診療所で診察した帰宅困難者の負傷状況と位置をデータベースにインプット可能にする見込みだ」(澤部氏)。
帰宅困難者受け入れ施設用の受付システムを用いた実証実験では、東京湾北部で地震が起き、東京都千代田区で震度6を観測し、14時頃にJR「有楽町」駅とJR「東京」駅の周辺で帰宅困難者が発生して、両駅近辺で帰宅困難者受け入れ施設を開設した事態を想定した。
実験では、最初に帰宅困難者がスマートフォンで、受け入れ施設内に貼られたQRコードで、チェックインとチェックアウトを行った。その後、千代田区の災害対策本部が、開設済みの受け入れ施設の混雑度を確認し、三菱地所に大手町周辺で帰宅困難者受け入れ施設を開設することを要請して、帰宅困難者に施設間での移動を促し、各施設の空き状況を平準化した。
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