會澤高圧コンクリートがPC建築分野に本格参入、北海道にフルPC構造の新工場棟を新設導入事例

會澤高圧コンクリートは、プレストレストコンクリート(PC)を使用した建築の分野に本格参入するために、北海道の深川工場敷地内に、新工場棟を新設している。新工場棟には、大型製品を製造できる大空間を設けた他、2018年9月に発生した胆振東部地震での被災経験を踏まえ、大規模な地震や気象災害に直面しても高い靱性によって構造が破壊されない高度な建築性能を実現するため、フルPC構造を採用した。

» 2021年01月08日 09時00分 公開
[BUILT]

 會澤高圧コンクリートは2020年9月16日、プレストレストコンクリート(PC)を用いた建築の分野に本格参入することを発表した。また、道北エリアへの大型プレキャスト製品の供給を強化するため、このほど北海道深川市にある深川工場の敷地内で新工場棟の新設に着手し、工場の構造体には、同社が製造したPC部材を採用した。

非構造壁には3Dプリンタで立体感のあるレリーフ調にデザイン

 新工場棟は、PC造1階建てで、延べ床面積は1290平方メートル。所在地は北海道深川市広里町3丁目1-6で、建築面積は1330.56平方メートル。意匠設計はアーブ建築研究所が担当し、構造設計はジェーエスディーが担い、施工は伊藤組土建が務めている。着工は2020年3月で、操業は2021年1月を予定している。

新工場棟の全景 出典:會澤高圧コンクリート

 建屋は、「下部柱」「上部柱」「端部梁」「中央梁(はり)」といった4種類の部材から成るものをPC鋼材で一体化した13個のフレームで構成されている。プレストレスの導入手順とフレームの一体化方法は、まず梁の中に通したPCケーブルを引っ張り固定することにより、PCケーブルの戻る力で、部材同士を圧着し、梁を一体化させる。次に、柱の中に通したPC鋼棒を引っ張り固定し、PC鋼棒の戻る力で、部材同士を圧着させ、柱と梁を接続する。

新工場棟全体像(左)と1フレームの部材構成(右) 出典:會澤高圧コンクリート

 下部柱間の非構造壁には、3Dプリンタを使い1枚あたり50分でプリントした1780(幅)×250〜450(奥行き)×2860(高さ)ミリの積層パネルを16枚設置した。非構造壁のデザインは、自由な形状を造形できる3Dプリンタの特徴を生かし、立体感のあるレリーフ調に仕上げた。

 さらに、新工場棟の設計から施工に至るまで、実際に関わった會澤高圧コンクリートの担当者を撮影し、点群データを3DCADデータに変換してロボットアーム式のコンクリート3Dプリンタに送り、各パネルにプリントした。

非構造壁のプリント状況(左)とプリント完成品(右) 出典:會澤高圧コンクリート

 全部材は會澤高圧コンクリートの訓子府工場で製造し、PC工事一式を同社が伊藤組土建から下請けする形で施工している。2021年1月16日の上棟祭で、中央梁のクレーン設置を終え、新工場棟が完成する。

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