大成建設は、特殊なセメントをマテリアルに用いた建設用3Dプリンタで、プレストレストコンクリート構造のベースとなる部材の製作を研究している。実現すれば、型枠を使わずに複雑な形状の部材を簡単に短時間で自動作成することができるようになる。
大成建設は2020年2月17日、建設用3Dプリンタ「T-3DP(Taisei-3D Printing)」で製作した部材に、PC鋼材を挿入、緊張して接合したプレストレストコンクリート構造(PC構造)を適用した国内初の橋を製作したと発表した。
T-3DPはアクティオや国立高等専門学校機構有明工業高等専門学校、太平洋セメントが開発した製品で、圧送しやすく固化しやすい特殊なセメント系材料を使用しているのことが特徴だ。
この材料とノズルからの押し出し量を常に一定に保つ特殊なノズルとを組み合わせることで、型枠を使わずにセメントを積層しながら曲線や空洞を配置した構造的に合理的な形状の建設部材を3Dデータから高精度に自動で製作できる。
この橋は、構造分析や感度解析、モデル変更を繰り返しながら不要な材料を削り、最終的に軽くて強い構造になるような形を見つける手法「トポロジー最適化手法」を採用し、構造体として最適化を図った。結果として、T-3DPを用いて型枠を使わずに複雑な形状の部材を簡単に短時間で自動作成し、軽量で強固な構造を創出した。
今回の橋は、大きさが1.2(幅)×6.0(奥行き)×1.0(高さ)メートルで、合計44個の部材で構成されている。トポロジー最適化手法を使用することで、実施前の重さから約1/4に軽量化した。
複雑な形状の部材製作は、これまで型枠を利用した施工法を採用していたため、各部材の型枠を作ることなどに手間がかかりすぎ困難だった。だが、T-3DPにより、1部材あたり約2時間という高速で高精度に自動生産することが可能になった。
橋の中央上面に1トン(供用時の歩行時想定荷重の約3倍)の荷重を搭載し、曲げ試験では、構造体として十分な強度があることを確認した。構造体は弾性的な挙動を示し、ひび割れの発生や荷重を取り除いた後の変形も無かったという。
今後、大成建設は、T-3DPを用いて製作した構造体の力学特性や施工法のノウハウを蓄積し、柱や梁(はり)など構造躯体への導入を目指し、技術の実用化に向けさらなる研究開発を進めていく。
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