プレキャスト桟橋上部工に鉄骨差し込み接合を採用した新工法、東亜建設工業新工法

東亜建設工業は、鋼管杭と上部工の接合部に鉄骨差し込み接合を採用し、杭頭部コンクリートをプレキャスト化して、これまでの現場打ちによる施工で、煩雑かつ多大な労力を要していた海上作業の負担を軽減させ、現場作業員の省人化と安全性向上を実現する新工法を開発した。

» 2020年09月16日 09時00分 公開
[BUILT]

 東亜建設工業は、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部や梁(はり)、床版など全部材をプレキャスト化するにあたり、鋼管杭と上部工の接合に“鉄骨差し込み接合"を用いた「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発した。

鉄骨差し込み接合で鋼管杭と杭頭ブロックで生じる位置のずれをサポート

 港湾構造物の海上コンクリート施工は、特殊技能を有する作業員が必要で、多大な労力を要し、工事進捗が海象条件などに大きく左右されるため、海上作業の省力化と安全性の向上が喫緊の課題となっている。近年では、i-Constructionの一環として、コンクリート工の生産性向上に対する検討や港湾構造物のプレキャスト化が進められている。

 また、桟橋上部工のような複合構造物では、部材間の接合が大切で、とくに鋼管杭と上部工の接合が重要となる。しかし、海上での鋼管杭の打ち込みは、高い精度を実現することが難しいため、桟橋の上部工築造は、大掛かりな支保工を構築して、現場打ちコンクリートにより施工するのが一般的だった。昨今、杭頭部をプレキャスト化して施工する事例も増えているが、施工誤差の吸収や海上作業の削減面で課題があった。

新工法のイメージ 出典:大和ハウス工業

 前記の問題を解消するため、東亜建設工業は、海上桟橋の上部工を構成する杭頭部や梁、床版の部材をプレキャスト化し、鋼管杭と杭頭ブロックの相対的な位置のずれに対し柔軟な設計を可能とする鉄骨差し込み接合を用いた「プレキャスト桟橋上部工の施工合理化工法」を開発した。

 新工法は、海上桟橋の上部工築造で、コンクリート工の作業を海上ではなく大部分を陸上で行う。従来のプレキャスト施工と大きな相違は無いが、港湾の海上桟橋では例が少ない鉄骨差し込み接合の適用により、鋼管杭の施工誤差を補えるため、これまでと比較して施工性と安全性を高めている。また、杭頭ブロックの高さ調整は、陸上に設置する高さ調整プレートを使用することで、海上作業を測量のみにできる。

新工法の杭頭接合構造(左) 出典:大和ハウス工業

 杭頭ブロックは、陸上にて梁ブロックを連結させた大組ユニットを施工条件に合わせた自由な形状で構築するため、海上作業が減り工程の短縮につながる。

 鉄骨差し込み接合は、海上に打ち込んだ鋼管杭の内部に、杭頭ブロックから突出させた差し込み鋼材を挿入した後に、中詰コンクリートを打設することで杭頭ブロックと鋼管杭を接合する。差し込み鋼材と中詰コンクリートで構成した差し込み部材を介して、上部工と鋼管杭の荷重を伝える。接合部の設計は、鉄道構造物などの設計標準などに記載の設計法に準じて実施する。

 現在、新工法は、接合構造に関する要素実験や実証試験による性能評価手法の検討は完了している。今後は、杭頭部の構造のみならず梁や床版も含めた一連のプレキャスト桟橋構築の合理化を目指し、ICT導入による機械化や自動化技術に発展させることを進めていく。さらに、桟橋施工全体の合理化技術を完成させるため、現場実証実験や試験施工などを経て実用化も進めるとしている。

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