東急建設は、独自開発した建設現場向けVR体験型の安全衛生教育システム に、吊り荷落下などの「建機・クレーン災害」とボックスカルバート型枠が崩れ落ちる事故などの「崩壊・倒壊」のコンテンツを追加した。これで建設現場の3大重篤災害を全てをカバーすることになり、より一層の事故撲滅が実現すると期待を寄せている。
東急建設は2020年10月19日、VRゲームテクノロジーを活用した体験型安全衛生教育システム「Tc-VOW(ティーシーバウ)」の新たなシチュエーションとして、「建設機械・クレーンなど災害」「崩壊・倒壊災害」の2つのコンテンツを追加した。既に、新東名高速のトンネル工事で、協力会社の作業員約50人を対象にVR安全教育を行った。
Tc-VOWのシステムは、建設現場の災害事故撲滅を目指し、バンダイナムコアミューズメントラボ(開発当初、バンダイナムコスタジオ)の技術支援の下、2017年11月に開発したVRシステム。
体験者が仮想空間内で、災害事故をリアルに疑似体験することで、その原因を被験者自身が考え、災害事故発生防止のために自らが取るべき行動を学習することを目的としている。これまでに、東急建設の建設現場で働く従業員、協力会社を対象に、累計約300人もの安全教育に活用してきた。
当初、疑似体験のシチュエーション(コンテンツ)は、災害発生時の重篤性から「墜落・転落災害」を先行して開発したというが、建設現場における3大災害の残りの2つ「建設機械・クレーンなど災害」と「崩壊・倒壊災害」のコンテンツをそれぞれ2018年5月と2019年11月にリリースし、幅広い業種の協力会社にも役立つ内容としている。
Tc-VOWのコンテンツは、数多くのゲームコンテンツに取り入れられている感情や心理といった人間の行動原理に影響を及ぼす、「ストーリー性」を持っているため、建設現場の災害事故に至る過程がVR空間で忠実に体感できる。
これまで行われてきた安全衛生教育は、災害事故事例を用いた教本や映像による受動的な学習が主体だったが、Tc-VOWでは、体験者がヘッドマウントディスプレイ(HMD)と手足に装着したコントローラーを使い、VR空間内の建設現場で実際に手足を動かす作業を行いながら、没入感をもって学習するため、リアルな体験として記憶に残るものとなっている。
また、従来の体験型教育では、体験者に模範的行動を習得させることを目的としているのに対して、災害事故の主な原因となる「気付き忘れによるミス」「横着する」といった体験者本人が起こしそうな“不安全行動”を誘発しやすい状況設定を意図して制作しているという。本来、起きてはならない災害事故を疑似体験することで、災害事故発生につながる不安全行動を起こさないよう安全意識を喚起させ、災害事故撲滅に大きく寄与することが期待されている。
新コンテンツについては、NEXCO中日本発注の新東名高速道路「湯触トンネル工事」で、新型コロナウイルスの感染対策を行いながら、3日間で約50人の作業員が体験する大規模な教育を行った。
東急建設では、必要に応じて新たなコンテンツの拡充や外国人作業員が増加している現状を踏まえた英語版のアップデートも検討していくとしている。
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