清水建設は、山梨県北杜市のオフィスビル「森の中のオフィス」で、当初はZEB化を目標にしていたが、環境負荷の低減をより求める施主の要望を受け、使用電力を商用電力に頼らず、100%自給自足することを目指している。
清水建設の設計・施工で2013年5月に竣工した山梨県北杜市の中規模オフィスビル「森の中のオフィス」では、2020年3月1日から商用電力を一切使用せずに、建物の電力需給を維持する「オフグリッド運用」に取り組んでいる。
現在では、ビルの電源を商用電力網(グリッド)から切り離して、8カ月近くが経過し、計画通りに太陽光発電とバイオマス発電、蓄電池が補完しあい、リアルタイムに電力需給のバランスを保っている。オフィスビルの使用電力を100%自給自足するオフグリッド運用は、国内初の試みという。
森の中のオフィスは、生長の家が発注した2階建ての木造6棟で構成される延べ床面積8154平方メートル(駐車場含む)のオフィスビル。竣工時の電力需給収支は、冷暖房と照明の負荷を低減する技術で、通常の同規模オフィスに比べ45%、年間にして約475MWhの省エネ化を図ったうえで、使用する電力を太陽光発電(470kW)とバイオマス発電(175kW)、蓄電池(408kWh)、商用電力で補い、ZEB(ゼロエネルギービル)とする予定だった。
しかし現実には、オフィス利用者の省エネ意識の高さから、2013年7月の運用開始時から2020年2月までの7年間は、発電量が消費電力を約200〜300MWh/年上回るPEB(Positive Energy Building)で機能していた。そうした中、環境負荷の一層の低減を求める発注者の要請に応える形で、蓄電池の更新に併せてオフグリッド化による電力の完全な自給自足、本質的な再生可能エネルギー100%「RE100」に取り組むこととなった。
オフグリッド化にあたっての主な課題は、最適な蓄電池容量の設定をはじめ、これまで以上の環境負荷抑制に向けた太陽光発電の優先稼働、電力需給のリアルタイム・バランス、急激な過充電・過放電からの蓄電池の保護があった。
このうち蓄電池容量は、暖房負荷が大きい11〜4月に、1日あたりの消費電力量の最大値が1500kWh前後に達すること、オフグリッド運用上の発電設備と蓄電池の故障リスクや保守対応を鑑(かんが)み、蓄電池2セットで最大値の2倍以上の容量を確保した。具体的には、1824kWhの蓄電池2セットを並行稼働させ、充・放電を繰り返しながら、目標蓄電量まで充電させる仕組みを採り入れている。
ただし、蓄電池は過充電や低充電時の放電により、機能が自動停止するので、太陽光発電とバイオマス発電を自動制御し、そうした事態の発生を防止しているという。電力需給については、蓄電池の充放電制御により、太陽光発電の優先稼働による急激な電力変動を吸収し、リアルタイム・バランスを維持。一連の発電・蓄電・放電のリアルタイム制御は、清水建設が開発した「シミズ・スマートBEMS」が行っている。
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