CIMとパラメトリック機能を駆使、一品生産される土木構造物でも“設計自動化”へ3DEXPERIENCE Conference ONLINE(2/3 ページ)

» 2020年10月09日 06時07分 公開
[柳井完司BUILT]

自動計算機能で配置計画をスピードアップ

 講演では実際に作成した3Dモデルを披露しつつ、配置計画用の3Dモデルには、CATIAの設計手順を保持し、設計自動化を後押しするナレッジテンプレートを活用した自動計算機能を付与しているとした。

 そのため、堰堤形状を変えるたびに、上流側地形と砂防堰堤の形状や堆積土量が自動算出されるため、トライ&エラーの繰り返しも苦にならず、配置計画の作業は劇的に効率化した。「実際、丸1日以上かかっていた作業が今は1時間もかからない。例えば――」と、講師はCATIAの画面を開き、実際に3Dモデルを動かしながら説明を続けた。

 「このモデルでは砂防堰堤の堤高や幅、位置から根入やダム軸、有効高などもパラメータ化している。当初6メートルに設定した有効高を10メートルに変えると、その場合のコンクリートボリュームや補足量も即座に算出される」。

 ダム軸や有効高を変えて何パターンでも比較でき、結果は1枚のExcelシートにまとめて見ることもできる。B/C(Benefit by Cost)に優れた配置を素早く決められるのだ。さらに、工事用道路のルート検討も容易で、講師がデモでモデルのダム軸を20メートルほど伸ばし、合わせて工事用道路の平面線形を伸ばして見せると、即座に切土・盛土の範囲が示され、土量も自動算出された。

複数パターンのコンクリートボリュームや補足量の算出結果はExcelシートにまとめて見ることができる

 CATIAを用いて開発された配置計画モデルは、もう一つ特異な機能を備えている。それは、「再利用が可能な点。さまざまな変更に柔軟に対応するモデルですが、他の現場ではどうなのか?新規の現場に合わせて一から作らなければならないのでしょうか?という疑問をよく耳にする」。

 しかし、どこであれ別現場の地形データを持ってくれば、その地形にモデルを当てはめられるという。つまり、他の現場にも簡単に適用できるのだ。「もちろん、そこで必要となるコンクリート量や補足土量の範囲も自動的に生成。これをうまく使えば、極めて効率的な配置計画を検討できるはずだ」。

新しい現場の堰堤配置場所へ貼り付けるだけで、配置計画用モデルはその地形に合った堰堤・土砂モデルを自動生成する

予備設計を可能にするパラメトリックモデル

 次に採り上げたのは、予備設計を検討するため、CATIAで作成した“パラメトリックモデル”。従来は、2D図面で予備設計を行っていたため、正面図と側面図など2D図面の間でしばしば齟齬(そご)が生じ、不整合による手戻りなどにつながることも多かった。「そこでCATIAを用いた予備設計では、最初から3Dモデルで設計していくことにした」。

 設計者は3次元で地形を確認しながら設計できるので分かりやすく、設計作業を進めやすいのである。しかも、2D図面もその3Dモデルから生成するため、図面間の不整合なども生じない。手戻りによるロスも減らせると、同社では考えている。

予備設計用モデルは、本堤、側壁護岸、水叩き、副堤などの各モデルにパラメータを設けたパラメトリックモデル

 また、「この予備設計用の3Dモデルは本堤や側壁護岸、水叩(たた)き、副堤など要所要所にパラメータを設けたパラメタリックモデルで、各数値を変えることでモデル形状もこれに追随して変わる」と説明して講師は、CATIAで砂防堰堤のモデルを開いた。

 「このモデルの水叩きは水平状態で数値もゼロだが、ここへ“10”と(パラメーターを)入力すれば水叩きに、10分の1の勾配が付き、合わせて副堤も自動的に下がる」。つまり、値を変えることで形状も自動で変えられるというわけだ。また、パラメータ同士に関係性を持たせられるので、“本堤の高さが伸びたら、それだけ本堤・副堤間も開く”といった独自の経験式も入れている。

パラメトリックモデルでは、水平状態の水叩きのパラメータに10と入れれば、10分の1の勾配が付き、副堤も自動的に下がる

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