戸田建設らは、山岳トンネル覆工コンクリートの打ち込みによりセントル(移動式鋼製型枠)に働く圧力を見える化する「スマート圧力センサーシステム(仮称)」を開発した。新システムは、セントルに作用する多様な箇所の圧力許容レベルを判定するだけでなく、打ち上がり高さと偏圧影響の有無を管理できる。
戸田建設と建築資材の専門商社・児玉は、山岳トンネル覆工コンクリートの打ち込み中におけるセントル(移動式鋼製型枠)に作用する圧力を可視化する「スマート圧力センサーシステム(仮称)」を開発した。
従来、圧力センサーは、目視困難な天端部の吹き上げ方式による打ち込み管理で、限定的に使われるケースが多く、ディスプレイに表示された圧力値が打ち込み完了の目安に使用されていた。
また、側壁部の打込みでは圧力センサーを利用することなく、検査窓から目視で打ち上がり高さを確認し、打ち上がり速度の超過が原因のセントルへの過度な側圧や側壁部左右の打ち上がり高さで生じる差の増大が原因の偏圧が発生しないことを確認していた。
しかし、打ち込まれるコンクリートは、季節によって凝結し始める時間が変化し、セントルにかかる側圧も変化して、流動性の高いコンクリートを使用すると通常より側圧が大きくなる。過度な側圧になると、セントルの変形や偏圧によるセントルの横移動を生じさせるリスクがあった。
上記のリスクを低減するために、戸田建設はスマート圧力センサーシステム(仮称)を開発した。新システムは、セントル面板全体に圧力センサーを計55台配置し、測定結果を圧力値だけでなく、色の違いでリアルタイムに表示する。コンクリートが打ち込まれていない箇所は白色で、打ち込まれた箇所は薄い青色で画面に映し、圧力の高まりとともに青色が濃くなる。
また、圧力が高まり20キロパスカル(kpa)を超えると緑色、黄色、赤色へ段階的に変色する。黄色は注意を示し、赤色は打ち込みの一時休止を知らせる。なお、色が切り替わる圧力のしきい値(境界となる値)設定は自由に変えられる。
新システムの効果としては、側壁部から天端部までのセントル面板全体における圧力分布が色で表現され、打ち込まれた範囲や危険レベルの圧力発生状況、偏圧発生の可能性などが直感的に作業者の能力を問わず分かりやすくなった。圧力の上昇に応じて打ち込みの一時休止などを正確に判断でき、セントルの変形に伴う出来形の精度不足やセントルの横移動によるひび割れ発生を防止する。
現在、鹿島建設は、新システムを福島県博士トンネル工事に適用中で、保有するセントルの自動測量システム「セントルEye」と併用し、打ち込み時のセントルに作用する圧力とセントル挙動との関係性を調査している。
今後は、今回のリサーチで収集した圧力のデータを基に、セントル挙動リスクに対する警報発令を新システムに盛り込む予定。加えて、トンネル工事に適用を重ね、信頼性をチェックした後、NETIS登録と一般販売することを計画している。
上記工事では、同社の保有技術「Rail Walker System」「ジュウテンミエルカ」「E-WALKミスト(予定)」なども併せて導入する。
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