大成建設は、ネットワークに接続した定点カメラとウェアラブルカメラの映像やセンサーで取得したデータをスマートフォンやPCに表示し、ステークホルダーがリアルタイムに現場の状況を確認できる「T-iDigital Field」を開発した。T-iDigital Fieldの効果を確かめるために、香川県発注の椛川ダム建設工事で実証実験を行った結果、ボーリング作業の検尺への発注者立会やコンクリート打設管理で、移動時間の削減などで有効だと判明した。検尺立ち会い検査は、大成建設が2019年度に実施した基礎処理工事の検査では、約3分の1を占めており、新システムを活用することで効率化が期待されている。
大成建設は、ネットワークにつなげたカメラの映像やIoT機器で得られたデータを用いて建設現場の施工状況を可視化し、工事関係者が遠隔地からリアルタイムに現場の状況を確かめられるシステム「T-iDigital Field」を開発した。
近年、建設業では人手不足が進行しており、限られた労働力で業務を行うため、生産性向上が急務となっている。業界では、生産性向上を図る手段の1つとして、現場の施工状況をリアルタイムに把握し、ステークホルダー間で情報を共有するシステムの確立を進めている。
また、国土交通省では2020年3月、建設現場での遠隔臨場に関する試行要領を策定し、ウェアラブルカメラなどを用いて場所を選ばす施工状況を確認できるシステムの利用を後押ししている。
遠隔臨場の土台が整ってきたことやニーズの高まりを受けて、大成建設はT-iDigital Fieldを開発した。T-iDigital Fieldは、現場を俯瞰する定点カメラや作業状況を映し出すウェアラブルカメラの他、建設機械の位置や打設進捗の状況を各種センサーで得られたIoTデータにより可視化する多数の施工支援アプリケーションから成る。
撮影した動画やセンサーでセンシングしたデータを作業所に設置されたモニターだけでなく、スマートフォンやPCにリアルタイム表示可能なため、ステークホルダーは、建設機械の稼働状況やコンクリート性状、作業進捗を遠隔地から容易に調べられる。
新システムの機能をチェックするため、香川県発注の椛川ダム建設工事で実証実験を行った。実験では、ダム建設地と遠隔地にある現場事務所で新システムを活用した発注者立会とコンクリート打設管理業務を試行した。
発注者に立ち会いでは、現地映像データなどに基づき遠隔臨場によりボーリング作業の検尺を行った。結果、発注者と施工管理者は、建設現場にて直接立ち会うことなく現場事務所からモニターで施工進捗状況の一括把握が可能となり、建設現場への移動時間約1時間を削減した。さらに、大成建設の作業員は、現場での立会と調整時間を減らせることが明らかになった。
コンクリート打設管理では、施工管理者が、建設現場でのコンクリート打設状況をカメラ映像や打設支援システムを使って確認し、現場事務所で打設コンクリートの品質チェックや進捗状況に応じたコンクリートの発注などを行い、作業時間の削減や施工管理の効率化が図れることが判明した。
熟練技術者が、遠隔地から現場にいる担当の若手技術者などを指導することで、現場作業の支援と技術継承も併せて進められることも分かった。
今後、さらに多様なモニタリングアプリケーションを開発し、現場の作業状況をより詳細に可視化することで、新システムを用いた最適な現場管理と生産性向上を実現する。加えて、新システムを現場外にも適用し、専門知識を持った熟練技術者が遠隔地から若手社員に、指示できる環境の整備を目指していく。
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