【第6回】「迷走する設備BIMの後れを取り戻せ!」(前編)BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(6)(2/3 ページ)

» 2020年07月01日 10時00分 公開

設備BIMで設備設計が果たすべき本当の役目

 平面図は、意匠設計の2次元CADデータを使う。配管は、太さに関係なく単線で表現している。機器や配管の位置には寸法は無い。断面図や矩計図が無いので、系統図と平面図の縦配管の表示で判断している。設備の設計段階では、機器や配管の仕様は明確になっているが、どこに設置するとか、どこに配管するとかということは決まっていない。決めるのは通常、施工段階でサブコンの役割となっているので、そこまで決める裁量が設計段階の設備には無い。

 その状態で設備の機器や配管を立体化しても、正確な位置を決めていないので、干渉チェックをすると、納まっていない部分が多く見つかる。意匠・構造との干渉だけでなく、設備モデル自体の配管や機器の干渉も少なくない。しかし、この段階でこのような問題があっても、施工段階でサブコンが何とかするから大丈夫ということになる。設備設計は、基本的な設備計画を定め、仕様とコストを明確にするだけだとの認識が根強くある。

設計段階の干渉チェックで発見される項目の例

 2010年ぐらいに、設備のマネジャークラスに対して、設計段階で設備モデルを作り、意匠・構造と統合モデルも作って、実施設計段階でも多くの干渉部分があること、それを設計段階で修正しておくことにBIMの意味があるという説明をしたことがある。その時の感想が、「そもそも、設計段階で納まりを調整しておくことは、設備設計の仕事ではなく、施工段階のサブコンの範ちゅうだ。設備設計の担当者には、納まりを調整するほどの時間的余裕は無い。もしそこまで検討するとしたなら、サブコンは必要無くなり、業者に直接発注すればよいが、そのようなことは今の設備担当者の仕事ではない」というものであった。

 私は、設備は本来、3次元で設計・施工すべきだと考えている。しかし、BIMの技術がなく、線と文字で設計を行わねばならない時代に、こうした役割が普遍的になったのだと推測される。そのため、設備がBIMに移行するには、CADソフトを変えるだけではなく、仕事の役割や業務プロセス自体を見直さなければならない。慣習に縛られ、それができずにいるため、設備のBIMへの移行は一向に進まない。

サブコンによる設備BIMの取り組み

 サブコン側からすると、設計の曖昧な情報を使って、施工図を書くことは難しいので、基本的に1から設備の施工図を作成する。基本的に、設計と施工との設備データの連携は同じソフトを使っていても、連携は必要ない。ある物件で、設計の段階からサブコンにお願いしたが、同じサブコンで同じソフトを使っていても、設計と施工のデータ連携はしないことが多いと聞いた。サブコン側がBIM化しないので、設計でBIM化しても意味がないという意見もあるが、そもそも設備の現状は、設計と施工の連携を前提としない業務プロセスなので、実はそれはあまり関係のないことである。

ある物件で設備サブコンが作成した設備BIMモデル

 実はサブコン側では、複雑な納まりの問題を解決する目的で、兼ねてから設備CADの3次元機能を使っている。3次元でなければ解決できない問題があるから、この機能が必要となる。

 ある現場のサブコンから、「データ連携で一番ありがたいのは、鉄骨工場からの鉄骨モデルだ」と聞いたことがある。サブコンは納まり確認のために、設備CADで鉄骨のモデル入力をしており、この手間が低減されるのがその理由だった。

 サブコンはこのように3次元機能を駆使しながら、設計で示された仕様に基づき、きちんと納めていただいている。設計段階でどうやって納めるのか分からない問題点も、なんとか納まっていたので驚いたことがある。

サブコンが設備CADで入力している鉄骨によるスリーブ位置の検討

 このような仕組みができたのは、サブコンがなかなか決まらないことも原因の一つにある。サブコンへの発注金額の調整に時間がかかるなどの理由で、着工してもサブコンが決まっていないこともある。サブコン決定後に始めて、設備の仕様や配管ルートが再度検討され、配管や取り付け位置の寸法の入った施工図が作成されることで、設備機器や配管の位置がやっと明確になるというわけだ。このように、日本の設備はサブコンの技術力に支えられている

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