3タイプの夜間照明とは別に、点灯開始前と消灯後にも新たなライティングを追加。点灯前(日没頃の1時間)は、シンプルな白色の光に、ゲイン塔と地上250メートル、150メートル付近を虹色に照らす。消灯後(毎日午前0〜6時)は、今までは天望デッキと天望回廊の時計光だけだったが、月ごとの誕生石のカラーでゲイン塔の頂部を照射し、天望デッキより下の交点照明も動きのある照明に変更した。
工藤氏は、「新型コロナが世界中でまん延する中、東京の夜景を彩るスカイツリーが遠景ではゲイン塔頂部の輝きと、近景では躍動感あふれる多彩な演出となったことで、世の中に明るさをもたらしたい」と期待を込めた。
LED投光器を提供したパナソニック ライフソリューションズ社は、ライティング事業部 エンジニアリングセンター 東京照明EC 上田泰佑氏が、「計画段階では、2020年の東京五輪開催で観光客が増えることを見据え、東京にさらなる輝きを!パワーアップライティング!を標ぼうして、約18キロ先の羽田空港や東京都庁からの視認性向上と、近場での躍動感のある照明演出を目的に、2015年からプロジェクトの検討に入り、2020年2月に竣工するに至った」と、ライティング増強工事の概要を説明した。
工事では、これまでの運用していた照明器具2075基のうち、既設60基を撤去し、新たに347基を増設。各内訳は、低層部にある送信機室の暗がりを無くす目的で、150メートル付近に72基と250メートル付近に96基。塔照明全体のフルカラー化のため、497メートルに60基と615メートルの位置に23基。頂部の630メートルには、72基と24基を設置した。
照明計画は、どうすれば遠景18キロからの視認性を上げつつ、近景・中景で印象的なライティングにできるかを思案し、頂部ゲイン塔の照明実験とCGシミュレーションで試行錯誤を繰り返した。実証実験では、2015年4月にスカイツリーゲイン塔に、照明器具を設置して、輝度光と間接光をテスト。RGB(赤・緑・青)カラーそれぞれで、輝度光と間接照明光の相関関係を確認した。
その後、2016年10月〜2017年3月にかけて、東京スカイツリーイーストタワーの屋上に器具を置いて、直線距離で約19キロ離れた越谷レイクタウンの駐車場屋上から視認性を確認し、設定する出力と導入台数を決めた。その結果、RGBだけでは輝度が低かったため、桜色など淡い調色もしやすい「W(ホワイト)」も入れ、演出の幅と明るさを確保することとなった。しかし、明るすぎると“光害”となることも懸念されたため、視認性は保ちつつ、近距離では適切な輝度となる光が広がらない、「超挟角配光」のLEDを採用した。
次のCGシミュレーションでは、パナソニック独自の光環境シミュレーション技術「リアルCG」を用いて、東京スイカツリーの3Dモデルを基に、輝度のカラーレンダリングを試した。497〜630メートルのゲイン塔全体が発光して見えるように光を均一化し、150メートルと250メートルにある送信機室で垂直の照明が途切れてしまわないようにもするため、効果的な配灯を調べた。
2つの検証方法により、最終的に、630/497メートルには超挟角7度のLED投光器「ダイナシューター」と、下から照らすのに適し挟角・広角・超広角に応じる高出力LED投光器「ダイナペインター」をスカイツリー仕様にカスタムして導入することが決まった。耐久性能も、一例として630メートルの照明器具では、耐震性3.0G、耐雷性15kV/150kA、耐風速90m/sにするなど、スカイツリー独自の要求に耐える品質へと改良している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.