マルチホップ機能の特徴を最も生かせるのは、建設中のビルやトンネル、施設などでの設備管理といった屋内用途であると著者は考えている。セルラーやWi-Fiなどの電波伝搬調査や回線設計に携わってきた経験上、ビルや地下街などには、屋内基地局とレピータがどうしても必要になってくる。これはLPWAの電波でも同じことである。しかし、セルラーやパブリックLPWAサービスでは、ユーザーが自ら屋内に求められる数の基地局を設置することは、コスト負担があまりに大きい。
セルラーやパブリックLPWAサービスに対して、ZETAにはAPと比べ、小型軽量でかつ10分の1程度のコストで使える中継器があり、中継機を配置することにより、屋内でも十分な電波環境を築ける。さらに、工場など電波環境の変化が著しい環境でも、前述した特徴の通り、経路を迂回させることで通信路を確保可能だ。今後、屋内用途で、ZETAを活用する動きが拡大することをさまざまな業界が期待している。
定期的にZETAに関するセミナーを開催するなど、ZETAの普及に注力する団体にはZETAアライアンスがある。ZETAアライアンスは、多様な社会課題にZETAを適用することで、IoTによる超スマート社会に貢献することを目的に掲げる。2018年8月に第1回総会が開催され、2020年4月時点で、100組織以上が加入している。
デバイス・アプリケーション・プラットフォームベンダーや通信事業者、SIer、そして研究機関といった多様なメンバーで構成されており、スマートビルディングや鉄道、農業、物流、エネルギーをテーマにしたワーキンググループも形成され、社会実装の検討やビジネス機会の創出について活動が活発化している。ZETAアライアンスのメンバー会社が新たなデバイスやアプリケーションを開発し、他社が開発品を顧客に提案して、導入に至るケースも増えている。
ZETAアライアンスでは、ZETAアライアンスを介して、通信をつかさどるZETAサーバをオープンな環境で利用できるサービスを提供している。これに対しNECネッツエスアイより、高いセキュリティが求められる要件を扱うユーザー向けに、セキュリティ性やデータ保全性を高めた「Symphonict ZETA閉域プラットフォームサービス」が2020年3月にリリースされている。
Symphonict ZETA閉域プラットフォームサービスを使用することで、クラウドサービス活用時の情報漏えいや不正アクセスといったセキュリティに関する懸念と、オンプレミス構成における設備導入時や運用時のコスト負担を軽減させられる。
連載第1回では、ZETAの概要について述べた。ZETAは、ユーザーが使いたい場所で自由に活用でき、通信経路冗長効果を用いることでビルなどの屋内用途に適したLPWA通信である。ZETAアライアンスの活動も活発で、Symphonict ZETA閉域プラットフォームサービスといった新たなサービスも生まれてきている。
次回はZETAの活用シーン、パッケージサービス、デバイス、アプリケーションなどを説明する。
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