NECネッツエスアイが保有する伊勢原テクニカルセンター施設内の鉄塔で行った実証実験では、機能性や精度、有効性、利便性を検証した。鉄塔の下部と中部ではサインビーコンが起動せず、上部のみで稼働するように設定し、実験に臨んだ。「作業者が落下したら負傷する危険がある地点のみ、サインビーコンが動くようにした」(板垣氏)。
実証実験の結果について、板垣氏は、「事前にセッティングした通り、サインビーコンが鉄塔の上部でだけ可動し、ヘルメットにつけた振動ビーコンを震わせ、正しく動作することが分かった。また、ヘルメットの振動ビーコンが揺れることで、フルハーネス型墜落制止用器具の利用を促せることも判明し、モニタリングシステム上で、作業者の現在地やフックの状態を可視化することにも成功した」と話す。
課題については、「サインビーコンは、電波強度で距離を測位しているため、障害物などの影響を受けやすく、モニタリングする際に作業者の位置などで誤差が出てしまうケースがあり、現場に合わせて精度を高める必要を感じた。また、ヘルメットによっては振動ビーコンが取り付けにくいものがあったので、どのようなヘルメットでも違和感なく装着脱着が進められる仕組みを考えていく」と解説した。
さらに、「フックビーコンが、フルハーネス型墜落制止用器具のフックを身体に装着している状態で、未使用時でも使用中として、センシングすることがあったので、対策を検討する。フックビーコンの検知を担うパーツが耐久性に問題があったため、堅牢な汎用品への変更を視野に入れている」と述べた。
構想しているビジネスモデルは、元請け会社(ゼネコン)を対象に、リアルタイム安全帯使用状態検知システムをレンタルリース会社を介して、レンタルし、システム利用料や取得したデータ料、システム設計費で利益を創出する。
システム利用料は現場の規模や利用人数に応じて金額を決める。また、ユーザーが、システムの貸し出しやメンテナンスを行うレンタルリース会社に、定額で支払うレンタルメンテナンス料の一部をマージンとして受け取る。データ料はシステムの内容や使う人数で決定し、システム設計費は現場の規模や作業工数に合わせて、確定する。
今後の展望について、板垣氏は、「2020年6月11日から開始する建設WGのSeason3では、フルハーネス型墜落制止用器具の使用状況を見える化したモニタリングデータを基に、活用していない時間を算出し、管理者が安全の指導に使えるUIを開発する。ビジネスモデルは、バリューチェーンやマネタイズモデルを進化させる。行政機関やフルハーネス型墜落制止用器具メーカーなどに、システムの紹介やヒアリングを行う」と説明した。
加えて、「システム提供で必要となるレンタルリース会社にアプローチし、協業できるように働きかける。センサーデバイスの開発を担えるメーカーや流通会社のリサーチにも取り組む」と語った。
5Gの活用方法については、「作業現場からリアルタイムで、高精彩な映像を送信し、フルハーネス型墜落制止用器具の使用状況を管理者が視覚的に確かめられるようにするのに5Gを役立てる。ヘルメットに小型のカメラを実装し、5Gの大容量で低遅延な通信を用いて、作業者の視点を遠隔地の管理者が共有し、フルハーネス型墜落制止用器具を装着しているかをチェックしやすくする。得られた高精彩映像は、労働災害防止対策の教材などでも使う」と打ち明けた。
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