2月1日から建設業で5m超の高所は“フルハーネス原則化”、新構造規格への適合もフルハーネス義務化で何が変わる?

高所作業での“フルハーネス型”墜落制止用器具(旧名称:安全帯)の原則使用などを盛り込んだ改正政省令が2019年2月1日施行し、建設業では5m超えの高所作業でフルハーネスの着用が求められる。同日には、安全帯の規格を改正した「墜落制止用器具の規格」も施行され、一定の措置期間を経て、新規格に適合しない墜落制止用器具は2022年1月2日以降、メーカーや代理店は販売することができなくなる。

» 2019年02月01日 05時00分 公開
[石原忍BUILT]

 厚生労働省は、労働安全衛生法施行令(安衛法)と労働安全衛生規則(安衛則)の一部を改正し、2019年2月1日に施行した。高さ6.75m(メートル)を超える高所(建設業では5m超で推奨)では、使用する墜落制止用器具を「フルハーネス型」に原則化する。

新構造規格に適合しない墜落制止用器具は、8月以降は製造禁止

 今回の改正は、重篤事故が多発する高所からの墜落・転落災害を防ぐ目的で、足場の作業台や機械の点検台といった作業床を設置できない高所作業を対象に、墜落制止用器具(旧名称:安全帯)の着用を原則とした。

 墜落制止用器具は、胴体全体を支持するフルハーネス型を基本とし、高さ6.75mを超える作業での着用を義務化した。墜落事故の多い建設業では、5mを超える作業でフルハーネスを推奨。規定の高さ以下では、引き続き「胴ベルト型(一本つり)」の使用が認められている。高所作業車でも、高さが 6.75mを超えるバスケット内で作業を行う際は、フルハーネスの装着が義務となる。

 また、海外では身体の位置を保持する“ワークポジショニング”用器具と通常認識されている「胴ベルト型(U字つり)」は、高さ2m超で作業を行うケースでは、単独での使用は認められず、墜落制止用器具との併用が必須となる。

 フルハーネス、胴ベルト型(一本つり・U字つり)のいずれも、猶予期間として、2019年8月1日以前に製造されたものは、2022年1月1日までは高さに関わらず使用できるが、翌2日からは規定通りの使用以外は禁じられる。

「墜落制止用器具」として認められる器具 出典:厚生労働省
フルハーネス型墜落制止用器具 出典:厚生労働省

 また、2019年2月1日の政令・省令施行に先立つ、1月25日には、厚生労働省から「安全帯の規格の全部を改正する告示」(新構造規格)が関係団体やメーカーなどに通知された。これは、法42条に基づき、墜落制止用器具の構造規格を見直したもので、ISO(国際標準化機構)規格に整合を図りつつ、日本人の体格などを踏まえた独自の基準を設定している。

 新構造規格は、フルハーネスや胴ベルト、命綱となるランヤードなどの使用高さの制限をはじめ、墜落制止用器具の構造、部品の強度などに求められる要件と、それを検証するための試験方法を、従来よりも厳格に定めた。一例では、フルハーネスの構造では、従来の肩やもも以外にも、新たに腰部への装着を明記した。

 また、ランヤードに関しては、衝撃を吸収する機能を持つショックアブソーバ付きのものは、腰より高い位置にフックを掛けるときは「第1種」、足元に引っ掛けるときは「第2種」という規定が設定された。取り付け設備の高さや作業者の体重に応じたショックアブソーバのタイプと、ランヤードの長さ(ロック付き巻取り器を備えるものを含む)を適切に選択することが明確化されている。

ショックアブソーバの適切な選定 出典:厚生労働省

 なお、現行規格品の製造は、2019年7月末までが認められるが、翌8月以降は販売のみが認められる。販売自体も旧規格は2022年1月1日までとなる。

経過措置(猶予期間) 出典:厚生労働省

【訂正:初出時、記事内容に誤りがありました。上記記事はすでに訂正済みです(2019年2月1日午後14時30分)】

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