セミナー後半では、IoTセンサーを用いた空調の自動制御やトイレットペーパーの使用量を見える化するシステムを紹介した。
IoTセンサーを用いた空調の自動制御システムについて、井上氏は、「オフィスに配置したセンサーで収集した温湿度や照度、二酸化炭素濃度の情報と、手動で空調を操作した記録を教師データに、自動制御システムを構築することを構想している」と語った上で、同システムを開発するきっかけになったプロジェクトに触れた。
梓設計が保有するオフィスの環境情報を視覚化した事例で、IoTセンサーやカメラ、マイク、ウェラブル、ネットワーク合計約230個を設置し、社員の心理状態やバイタル、照度、温湿度、揮発性有機化合物、気圧、二酸化炭素、風速といった13種類のデータ集めた。ウフル初の試みとしては、JIN製メガネ型ウェアラブルデバイス“JINS MEME”や“Apple Watch”を従業員に装着し集中度とバイタルデータを測定し、社員の体調やモチベーションを把握しやすくした。
「梓設計のオフィスは、1フロアが5000平方メートルで、620人の従業員がフリーアドレスで働いている。広いオフィスのため、通常、会話をしたい社員を見つけるのに苦労するが、社員の位置を視認化し探す時間をカットした。また、空調に対する要望が多く、自動制御システム開発のヒントとなった」(井上氏)。
続けて、「現場で、IoTセンサーをそのまま置くのはデザイン面で問題があると気付き、コンセントに内蔵したIoTセンサーを開発する契機となった」とコメントした。
リ・プロダクツと共同開発しているトイレットペーパーの使用量を見える化するシステムは、個室トイレのドアとトイレットペーパーホルダーに加速度センサーを取り付け、トイレットペーパーの減りやドアの開閉回数といったデータを収集し、IoTゲートウェイを介して、クラウドに送信する。同システムを使うことで、清掃員が利用状況に合わせて適切にトイレットペーパーの補充が行える。
井上氏は、「現状、多くの施設で、トイレットペーパーは定期清掃の際に、追加されており、使いかけのトイレットペーパーが捨てられるケースも少なくない。日本衛星工学会の指標によれば、入居者数3000人の施設で、トイレットペーパーの月間調達量は3000ロール。ロール単価40円で計算すると、年間144万円のコストがかかり、30%が途中で廃棄されると想定すれば、年間43万円の費用を無駄にしていることになる」と述べた。
さらに、「東京消防庁の資料によると、東京都内には地上10階以上の施設が2.2万棟あり、年間のトイレットペーパー廃棄量は2.4億ロールに及び、代金は95億円以上になる。トイレットペーパー2.4億ロールのライフサイクルで発生する二酸化炭素を試算した結果、9.6万トンとなり、環境にも優しくない」と解説した。
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