印藤氏はロボット導入の効果として、「生産性が向上し、省人化へとつながったが、現場からは当初、“仕事を奪われる”といった心配する声があった。しかし、いざ使ってみると早い時間に帰れるようになり、一人当たりの職人への給料もアップすることにつながった」と語る。
とくに溶接作業は、非常に過酷な業務でもあることから職人が減少しつつある職種の一つだ。これまで開発されたロボットは、一定のライン状をなぞるように溶接できても建築現場における複雑な形状の溶接には対応できていない。清水建設が開発している溶接ロボットは、PivotとRingの2タイプがある。どちらも2019年から実用化され、現場で活用される見込みだ。
当初開発されていたものは、本体重量が400キロもあり、持ち運びに難点があったという。この失敗を背景に、分割できる仕様とした。2人1組で持ち運べる重量にまで改良し、設置も容易にできるにした。
3つ目のロボットRobo-Buddyは天井ボード貼りをアシストロボと連携して、取り付け箇所も認識し、一部屋のほとんどをロボットだけで施工できる。
「これだけロボットによる作業が連動して行えるようになってくると、人がいらないのではないかという心配も出てくる。だが、実際の工程ではまだ10%ほどしか満たしていない。搬送だけを見ると、7〜8割ほど作業を減らすことができるが3つのロボットを合わせても全体の作業としては1.1%しか減っていない。日建連や政府が掲げる目標の10%20%の目標にはまだまだ遠い」。
実際にロボットを現場に導入することで新たな問題も浮上した。現場でロボットを動かす際に、労働者の安全に配慮することが必要となってくる。ISO10218では現場で働くロボットを想定しないため、基本的には法整備ができていない。このため、安全衛生法第28条の2にある労働者の危険または有害を調査して措置を講じるに基づいて、導入前に安全面が検討された。挟まれ防止のための装置や、バンパー、段差検知などの機能が装備された。
「本来の仕事のための性能に加えて、防護する性能、運用に当たって安全面に配慮した機能が必要になる。まだ国内の制度では人がいないところで使ってくださいというのが前提となっているため、法整備についても議論を進めていかなければならない」。
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総合建設コンサルタント・八千代エンジニヤリングは、2015年から全社を挙げて、BIM/CIM推進に取り組んできた。CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏は、これまでの歩みを振り返るとともに、CIMの導入に舵を切った5つの理由を示し、目標とすべき技術者像について説く。
現在、清水建設で稼働しているロボットは、基礎や躯体工事に使用されるエクスターが2台、Robo-Carrierは全8台(うち2台は展示・2台1ペアで3カ所稼働)。次年度からは16台に増やし運用していく他、Robo-WelderやRobo-Buddyの実用化ももうじき始まる予定となっている。今後、建築現場で働くロボットたちのプラットフォームを構築し、データーベースに稼働した中で得られたデータを集積。学習を繰り返していくシステムの展開も検討中だ。
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