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» 2020年03月16日 07時00分 公開

製品動向:大地震時に石垣の崩壊を防ぐ新補強材を開発、耐震性能は従来品の1.25倍

大林組は、大規模地震が発生した時に、伝統的建造物である城郭に配置された石垣の崩壊を防ぐ部材の開発を進めている。

[BUILT]

 大林組は2020年3月12日、城郭に設置された石垣の背面に積まれる栗石(ぐりいし)層に敷設して、大規模地震時に、石垣の崩壊を防止する補強材「グリグリッド」を開発したと公表した。

格子間隔の調整が容易

 近年、大規模地震の影響で、過大な損傷を受けたり、倒壊した城郭の石垣は、一度解体し、積み直すことで復旧されており、文化財的価値を保全するために、構築当時と同じ材料と手法を用いた施工が求められている。石垣前面に積まれる築石(つきいし)は、元の位置に戻し、背面に積まれる栗石は、伝統的手法と同様の人力で施工していく。

 石垣の前を人が通行する箇所では、従来、安定性を向上させる目的で栗石層に、盛土の補強に用いられる格子状構造のシート材「ジオグリッド」を敷設する補強方法が採用されていた。

 だが、粒径200〜300ミリ程の栗石をジオグリッドで補強する場合、格子間隔が50×50ミリ程と狭いため、栗石層の適合が阻害され、伝統的手法を適用することが難しいケースがあった。また、ジオグリッドは、ポリエチレン製の芯材をポリプロピレンで被覆した帯材で構成されているため柔らかく、地震時の栗石層の流動に追従して変形してしまう問題点もあった。

グリグリッドによる石垣補強のイメージ 出典:大林組

 新開発のグリグリッドは、ジオグリッドと同じ帯材とステンレス鋼やワッシャーを用いて格子状に接合したシート材。ジオグリッドは、格子交点部を熱溶着で固定していたが、グリグリッドは、格子交点部にワッシャーを用いることで、格子間隔を容易に調整できる。

 石垣によって栗石は粒径が異なるが、各石垣で使用されている栗石の粒径に合わせて、グリグリッドの格子間隔を変えることで、栗石のかみ合わせを重要視する伝統的手法に対応し、文化財的価値を保全しながら敷設が進められる。

従来のジオグリッドを敷設した場合の補強イメージ 出典:大林組
グリグリッドを敷設した場合の補強イメージ 出典:大林組

 地震を受けた石垣は、背面の栗石が築石側に流動することで変形し、ダメージが蓄積された結果、崩壊に至るが、グリグリッドを栗石層に敷設することで、栗石の流動方向に対し直交する向きにステンレス鋼が配置されるため、ステンレス鋼の剛性によって栗石の流動を拘束し、崩落を防げる。

 グリグリッドで補強した模型石垣(実物を5分の1スケール)に地震動を作用させた実験では、ジオグリッドで強化した模型石垣と比較して、1.25倍耐震性が向上することが明らかになっている。

 既に、グリグリッドは、熊本城天守閣石垣の一部で補強工法に採用されており、今後は、グリグリッドを全国に存在する城郭石垣の復元や積み直しに提案し、文化財の保護と施設利用者の安全確保に貢献していく方針を同社は示している。

実物の5分の1スケールの模型石垣をグリグリッドで補強して実験 出典:大林組

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