熊本城天守閣に住友ゴムの「制震ダンパー」採用耐震・制震・免震

2016年4月の地震で被害を受けた熊本城の耐震改修工事で、熊本城6階部の大天守最上階に、住友ゴム工業の制震ダンパーを採用することが決まった。

» 2018年05月31日 06時00分 公開

 大林組は、2017年2月10日から着工している熊本城天守閣の耐震改修工事に、住友ゴム工業の制震ダンパーを採用すると発表した。内蔵している高減衰ゴムによって、大地震や長引く余震にも強い構造とし、かつ設置後も開放感ある空間を確保できるとしている。

高減衰ゴムを用いた制震ダンパーを12基設置

熊本城天守閣の耐震改修工事全景 提供:大林組

 熊本城は2016年4月の熊本地震で大きな被害を受け、現在2038年度を復旧完了とする20年にわたる基本計画に沿った工事が進められている。

 今回採用される制震ダンパーは、3枚の鋼板の間に板状の「高減衰ゴム」を強力に接着したもの。高減衰ゴムは、住友ゴム工業がカーレース用タイヤで長年培った先進技術をベースに開発。地震エネルギーを瞬時に熱へと変換することで、揺れを吸収するため、大地震や日常的な風揺れにも強い。また、ゴムの復元性により、繰り返す余震にも有効としている。

採用した制震ダンパー製品図(単位:mm) 提供:住友ゴム
制震ダンパーの取り付けイメージ 提供:大林組

 2016年4月の熊本地震でも、同じ高減衰ゴムを装着した県内の戸建て住宅用の制震ユニット「MIRAIE(ミライエ)」を備えた132棟全てに半壊などの被害が及ばず、その耐震性の高さは実証されている。

 熊本城には、サイズH760(高減衰ゴム部分H380mm)×W180mm(ミリメートル)の制震ダンパー計12基を設置。大天守最上階(6階)の柱上部と梁を方杖(ほうづえ)状に連結して取り付ける。筋交いのように壁全面を使うことなく、開放感ある空間を確保したまま制震効果を得ることができる。耐候60年以上とメンテナンスフリーも実現。

 熊本城は1607年の築城で、1877年の西南戦争時に天守閣が焼失したものの、1960年にSRC造で再建。2016年4月の熊本地震で天守閣の瓦やしゃちほこが落下するなど甚大な被害を受けた。天守閣の耐震改修工事の竣工は、2021年3月31日を予定している。

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