また、建設RXプロジェクトでは、施工ロボットの業界標準を作り、業界末端までの普及につなげる。業界のすそ野まで施工ロボットの活用が広がれば、市場が形成されるため、自ずと生産台数が増え、価格の低下ももたらされる。同時に他産業からの参入も増加し、建設業自体の業務の幅が拡大する。現場で使用する協力会社にとっては、元請けごとに、扱うロボットの数が減るため、現場での生産性の向上にもなるとしている。
具体的な開発のアプローチとしては、「プロジェクトチーム内に、用途ごとに分科会を設置し、検証とブラッシュアップを繰り返しながら進める。施工ロボットの開発は、悠長な話ではなく、早急かつ具体的に着手しなければという問題意識を持っている」(村上氏)。将来は、BIMを核に配置したロボット開発のプラットフォームで、ロボットの行動計画や制御を一元化して複数台を同時に運用することも見据えている。
分科会は、既に「機械遠隔操作システム」と「場内搬送管理システム」の2つの会を開設し、現場での適用に向けて実証を重ねている。このうち、機械遠隔操作システムは、タワークレーンを対象に、地上の現場事務所などに設置された専用コクピットから遠隔で操縦し、オペレーターが運転席まで毎日階段で昇降していた負担が解消され、安全性も確保される。ゆくゆくは、現場から遠く離れた場所からのオペレートも視野に入れている。
一方の場内搬送管理システムは、BIMをロボットの走行ルート設定などに用い、まず1階に搬入された資機材が搭載された台車の下に潜り込み、リフター機能で持ち上げて運搬。エレベーターまで自動で移動し、目的階まで上昇して各フロアへと運び込む。搬送に使うロボットはトピー工業製「クローラーTO(トゥ)」で、全方向の移動や長尺な資材搬送を得意としている。
伊藤氏は開発の方向性について、「連携体制は、2024年3月までの5年間を設定しているが、2039年3月までの自動更新を当初から予定している。ただし2024年は、建設業界にとってエポックメイキングな年になることが予想される。一般企業では既に始まっている残業規制が、猶予期間を経て建設業界にも適用されるようになる。従来に比べ15%も労働時間が減ると予測されているため、それまでに生産性を確実に上げる施工ロボットを開発しなければ。今のところ外販することは想定していないが、反面、商用レベルのものでなければ、現場での使用に耐えられず、本当の意味で使ってもらうことは難しい」と説明した。
業界全体がまとまることで、ロボット技術が横並びになり、各社画一になってしまう懸念について村上氏は、「ロボットというと人型の何でもこなすものを想起してしまいがちだが、そうではなくそれぞれの用途に特化した賢い重機や道具を理想としている。そのため、多種多様なロボットをどう組み合わせていくかが、会社ごとの差別化にもなるはず。その先の土木領域については、グループの竹中土木にも参画を促し、段階を踏みながら検討していく」と語った。
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