パシコンが土木設計のCIMで、ダッソーの3D CAD「CATIA」を選んだワケCIM(2/3 ページ)

» 2019年12月19日 05時38分 公開
[石原忍BUILT]

橋梁設計での「CATIA」活用

パシフィックコンサルタンツ 常務取締役・松井弘氏

 3次元設計のメリットについて松井氏は、「発注者や周辺住民の目の前で、条件変更が示せ、合意形成が図りやすい。2次元図面では、構造図や断面図にすると不整合が出やすいが、3次元はモデルが1つのため間違いが生じない。結果として、コスト低減につながる」と話す。

 橋梁設計では、架橋位置にふさわしい形式や構造/材質の諸元を検討する「予備設計」と、詳細構造を決め施工計画を立案する「詳細設計」でCATIAを導入した。予備設計では、橋梁の形式や経間から、多ければ20案の構造案の中から、最終的に1案を選定する。その間には、膨大な図面を一から作成するため非常に手間がかかっていた。さらに、案件ごとに同じものが一つとしてないため、過去のストックも生かせていなかった。

予備設計と詳細設計の2段階を踏む橋梁設計
予備設計のフロー

 CATIAを使うことで、経間数や柱幅などをパラメータ化し、数値設定で設計を自動化させた。これまでは柱サイズなどの条件変更が一つでもあれば、梁(はり)幅も変わるため、全てを再計算してやり直しを余儀なくされていたが、3次元モデルであれば線形を変えるだけで、後は各部材が連動してデザインが変わることなく変更される。あらかじめ自動計算をプログラミングしておくことで、高さや幅などのパラメータを変えれば、CIMモデルもリンクして修正されるのが、CATIAの強みといえるだろう。

 ストック活用の面でも、一度作成した部材をファミリのようにモデル化することで、他の工事案件にも流用できる。モデルのストックを増やせば増やすほど、新規の3D設計に使えるようになるため、従来の図面書きの苦労から脱却し、大幅な効率化が見込める。

予備設計で3次元モデル化されたトラス橋

 予備設計の次に行う詳細設計では、LOD(詳細度)400〜500で鉄筋もモデル化する。あらかじめ鉄筋かぶりやピッチを設定することで、配筋が自動生成。2次元では無理やり収めていた梁(はり)と柱の交差部分が、3次元では可視化され、干渉チェックが行えるようになった。仮にコンクリート構造で変更があっても、モデル内の配筋も追随される。

詳細設計での3次元モデル。フーチング幅の変更

 CATIAの利点であるプログラミング機能について伊東氏は、「イメージとしては、DynamoやGrasshopperに近いが、より手軽で使いやすいVisual Basicのようなインタフェースでありながら、C++やAPI連携、インプット/アウトプットも可能で、従来は数日かけて行っていたことが、たった数秒で実現する。今まで何十年も変わらなかった土木設計を一変させられる」と語る。

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