パシコンが土木設計のCIMで、ダッソーの3D CAD「CATIA」を選んだワケCIM(1/3 ページ)

ダッソー・システムズは、2019年から国内の土木分野における3次元CADの領域に本格展開している。他社との差別化になるのがプログラミングツールを有するCATIAだ。CIMモデルにあらかじめプログラミングしておくことで、橋梁の高さや幅といったパラメータを入力すれば、自動で反映され、修正されたモデルが生成される。今までのように人の手で計算して、ゼロから図面を書き直す必要がなくなり、設計業務のリソースが大幅に削減される。

» 2019年12月19日 05時38分 公開
[石原忍BUILT]

 ダッソー・システムズは2019年12月11日、土木設計の分野で3次元設計により生産性改革を成功させた事例説明会を東京都内の本社で開催した。当日は、同社が土木ソリューションを開発するに至った経緯を解説した他、パートナー企業のパシフィックコンサルタンツが橋梁(きょうりょう)と砂防ダムの設計で3次元CAD「CATIA」を活用して、業務効率を実現させた事例も紹介した。

中国4位の「SMEDI」と橋梁CIMで連携

ダッソー・システムズ 森脇明夫氏

 ダッソー・システムズの土木ソリューションの開発については、建設・都市・土地開発業界 グローバル・マーケティング・ディレクター 森脇明夫氏が解説。同社は、日本でのBIM/CIMの本格参入に先立ち、中国の土木市場で4位に位置し、上海の橋梁工事の7割を手掛ける「SMEDI」と、2012年にパートナーシップを締結。2014年には3次元CADのプラットフォーム「3DEXPERIENCE」を活用した初のプロジェクトに着手し、2016年にCivil Engineeringアプリケーションで10件のプロジェクトを共同で行った。

 SMEDIがダッソー・システムズのプラットフォームを採用した目的は、中国特有の極端に短い工期と政府主導の工事で頻発する修正対応を改善し、入札や設計に要する時間を20%短縮することがあった。実現に向け、SMEDI内のR&Dセンターでは、7つのプロジェクトで3Dモデリングを作りつつ、ベストプラクティスの構築やアプリケーションの仕様定義を進めた。その結果、3DEXPERIENCEを関連するゼネコンも使い始めるようになり、中国での全面展開につながった。

 また、中国の国鉄が5社に分割したうちの最大手「China Railway(CRC)」の案件では、まだ鉄道向けBIMが確立していなかった2013年に3次元化を試行。9社が連携して、ダッソーのAECモデル・コレクションで、橋脚や鉄筋などの属性情報を統一化する鉄道版BIMの標準仕様「IFC(Industry Foundation Classes)」を策定。建設業界で扱うデータの統一仕様を決める国際的な組織「building SMART」を介して、グローバルでも標準化される予定だという。

3Dモデルがパラメトリックなため、変更や修正に即対応

パシフィックコンサルタンツ i-Construction推進センター・伊東靖氏

 日本国内では、2019年10月に建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツと「土木事業における働き方改革」を目指し、業務提携を結んだ。以降、中国をはじめ海外の土木事業で成果を挙げた3D設計の自動化や品質管理手法を、3DEXPERIENCEプラットフォームの一つ、ハイエンド3D CAD「CATIA」で提供し、国内での利用に最適化するため、デザインテンプレートなどを共同で開発している。

 橋梁と砂防ダムの設計業務を対象に行った具体的な試みの内容は、パシフィックコンサルタンツ 常務取締役・松井弘氏と、事業強化推進部 i-Construction推進センター・伊東靖氏が解説した。

 CATIAは、国内でも建築設計事務所でパラメトリックデザインを構築するために使われているが、パシフィックコンサルタンツではさまざまな形状をパラメータ化して設計できる点に着目して土木へ転用。CATIAの持つプログラミングツールとしての利点を生かし、設計業務の手間を省き、生産性を向上させた。

 そもそも土木構造物は、場所によって地形や地質が異なるため、現場での単品生産が基本となるため、一度設計した3Dモデルを使いまわすことができないことがネックだった。

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