地球と一体化する“インプラント工法”、都内の道路拡幅などインフラでも採用増新工法

技研製作所が開発した「インプラント工法」の国内採用件数は、2019年8月末時点で883件になったという。

» 2019年10月18日 10時07分 公開
[BUILT]

 ここ数年、激甚化し多発する自然災害に対して、国土強靱化の取り組みが進められるなか、粘り強い防災インフラを急速に構築できる工法として、技研製作所の「インプラント工法」の採用が全国で拡大している。

 インプラント工法は、鋼矢板や鋼管杭などの既成杭を地中に押し込み、地球と一体化した構造物(インプラント構造)を構築する工法。1本1本の杭が地中深く根を張ることで、地震による液状化や津波などの外力に対し粘り強く耐える。仮設工事も必要としないため、施設を稼働させたまま、周辺への影響を最小限に抑えて、迅速に工事を行える利点もある。

 近年は、東日本大震災からの復旧工事が進む東北沿岸部での防潮堤の新設や嵩上げ工事に加え、発生が危惧される南海トラフ地震、首都直下地震といった巨大地震に備える海岸・岸壁・河川堤防の地震津波対策、老朽化した橋梁(きょうりょう)・道路擁壁・鉄道盛土の耐震強化、湾岸埋立地の液状化対策などを対象に全国で採用が拡大している。

 これまでの代表的な案件では、2017年7月には九州新幹線(西九州ルート)の地すべり対策に導入され、2019年3月に高知県でため池の耐震補強工事にも適用されるなど、事前防災の領域でも活用は広がっている。

九州新幹線(西九州ルート)での地すべり対策工事(長崎県) 出典:技研製作所

 また、防災事業に加えて、高速道路の新設や道路の拡幅、港湾施設の拡張など、都市機能や経済活動の向上を目的としたインフラ事業でも高く評価されて採用に至るケースが増加している。

 長崎県では、インバウンド増加に伴う大型客船の寄航を可能にする岸壁改修工事に採用され、既存船舶の航行を継続したまま、短工期での増深工事を実現した。東京都や神奈川県では、住宅密集地にある幹線道路の拡幅のため、剛性の高い直径2000ミリの大口径鋼管杭を用いたインプラント道路擁壁も導入されている。

 インプラント工法の実績ベースをみると、2015年から右肩上がりで増え続け、2018年度は148件、2019年度は8月末の時点で発注済み件数は50件で、年度内には過去最大の167件を見込む。

 技研製作所では、今後も、全国での実績をさらなる具体的な工法提案へとつなげると同時に、海外への情報発信も強化していくとしている。

左から岸壁の改修・増深工事(長崎県)、大口径杭(φ2000)による道路拡幅工事(東京都) 出典:技研製作所

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