後半ではwallstatを使った構造計画における直下率と剛性バランスの利点を顧客に伝達する仕法についても解説した。
直下率の視認化について、中川氏は、「wallstatでは、室内の間仕切りではなく、耐力壁の直下率を対象としている。1996年に調査されたデータによれば、首都圏の在来木造建築物における直下率は、外周壁が30%前後で、内周壁が20%と低い値にとどまっており、1階と2階の構造が異なる建物が多いことが明白となっている。ある資料によれば、直下率は50%以下だと、事故物件の割合が高くなることが明らかになっており、優れた直下率を可視化すれば、物件のメリットとして使える」と説いた。
wallstatで、耐力壁の直下率が0%、25%、50%、75%、100%の5つの3Dモデルを同時に地震で振動させ、直下率の高さが被害を最小限に抑える様子を動画で伝えた。
剛性バランスの重要性の訴求方法として、異なる仕様で耐震補強した2つの物件と手を加えていない家屋をwallstatで耐震性を確かめた事例を挙げた。
中川氏は、「耐震補強していない家をプランA、1階を強化した建築物をプランBとし、1、2階を増強した家屋をプランCとし、wallstatで地震への強さを調べた。プランBとプランCのどちらが地震に力を発揮するかというと、プランC。プランCは住居の全体が損傷するが、全壊はしない。プランBは2階にダメージが集中し、その部分が完全に壊れてしまう。このように、剛性のバランスもwallstatでユーザーに映像で見てもらうことで、理解を深められる」と助言した。
最後に、中川氏は、「wallstatで、壁や接合部、ダンパーなどの壁量計算では判明しない粘り強さやエネルギー吸収能力などの本来の性能が確認可能だ。こういった情報に基づきユーザーと話し合うことで、地震後でも住み続けられる家として物件を提案できる」とまとめた。
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