感性価値に重点を置く独自のブランディング手法、工務店の常識を変える富裕層の顧客の増やし方A-Style フォーラム(1/3 ページ)

阿部建設は、HP製作への多額の投資やユニークなモデルハウスの建設、顧客の感性に訴える価値の提供などを強みにして、企業ブランドの価値を高めている。

» 2019年09月20日 06時00分 公開
[遠藤和宏BUILT]

 福井コンピュータアーキテクトは2019年9月10日、渋谷ソラスタコンファレンスで、「耐震性能は“差別化”となるのか〜価格競争に陥らない自社ブランディングとは〜」と題した住宅ブランディングセミナーを開催。

 当日は、札幌、仙台、宇都宮、さいたま、新潟、長野、横浜、名古屋、福井、広島、福岡、熊本など、全国26の会場で同時配信された。セミナーは、福井コンピュータアーキテクトが「A-Style フォーラム」と称して、全国の建築事業者向けに年間を通して、開催するイベント。

 今回は当日のセミナーのうち、阿部建設 代表取締役社長の阿部一雄氏が行った講演「基本価値×感性価値から広がるブランディング思考」を取り上げる。

HP製作に800〜1000万円を投資

阿部建設 代表取締役社長の阿部一雄氏

 冒頭、阿部氏は阿部建設の会社概要やブランディングを始めた経緯について触れた。阿部建設は、木造住宅や施設の設計・施工を中心に、リフォーム・リノベーション、バリアフリー建築などの事業を展開する工務店。

 阿部氏は2002年に、オートバイレース中の事故で下半身不随となり、車椅子生活となった。その経験を生かし、阿部建設の代表取締役社長就任後は、トータルバリアフリーコーディネーターと称し、健常者と障がい者の両方の視点から、バリアフリーを意識した住宅の建築にも精力的に取り組んでいる。

 講談社の漫画雑誌「Kiss」で連載中の車椅子建築士が主人公の漫画「パーフェクトワールド」に取材協力もしている。

 ブランディングをスタートした理由については、2017年にリニューアルした阿部建設のHPの例を挙げた。

2017年にリニューアルした阿部建設のHPのトップページ

 「HPに注力したきっかけは、地域マスター工務店主催の工務店Web大賞で大賞をいただいたことだ。この受賞を機に、800〜1000万円をHP製作に投じ、キャッチフレーズやレイアウトなどを細かく設定し、1年をかけ、2017年にHPを刷新した。HPは顧客を招く入り口であり、当社の事業の中でも重要なポジションにある」(阿部氏)。

 2000年に施行された住宅性能表示制度などの評価制度に関する企業価値についても考えを示した。

住宅性能表示制度施工時は、阿部建設も真っ先に取り組む

 阿部氏は、「こういった制度が施行され、住宅性能を重視した家づくりに力を入れた。住宅性能表示制度などを意識し、耐震や断熱などの性能を数値化し、工務店としての強みを明確にするという試みを当時推進していた」と語った。

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