大林組は、山岳トンネル自動化システムの初弾で、防水シート張り付け技術の省人化と作業効率を向上させるシステムを開発した。これまで労力がかかることに加え、熟練技能が必要だった防水シート張り付け作業を急速化・省人化し、施工品質も確保される。
大林組は、東宏、国際紙パルプ商事と共同で、山岳トンネルの防水シート張り付け作業を効率化し、高品質な施工を実現する壁面形状に追随する長尺防水シート自動展張システムを開発した。
大林組では、山岳トンネル工事のあらゆる施工現場で適用できる山岳トンネルの自動化システムの実用化に取り組んでいる。開発に当たっては、山岳トンネル工事を掘削作業と覆工作業の2つに分類し、掘削では「安全性向上と省人化」、覆工では「省人化と品質向上」をテーマに設定している。
今回のシステムは、山岳トンネル自動化システムの第一弾であり、覆工技術分野の一つ「防水シート張り付け技術」を対象としている。トンネル工事では通常、完成後に、周辺地下水の円滑な排水や覆工面への漏水防止、覆工と地山の縁切りするひび割れ抑制などを目的に、覆工打設前の吹き付けコンクリート面に防水シートを張り付けていた。
従来の防水シート張り付け作業は、作業台車最上段から壁面に沿わせて垂らしたロール状の幅約2.2メートルの防水シートを人力で、1枚1枚壁面に広げながら押し付け、釘(くぎ)打ち機で固定。トンネルの全周にわたって、隣り合う防水シートと溶着をしていた。
溶着は、十分な止水性と均一な接合強度が求められ、トンネル奥行き方向10メートル程度の施工で、5回の全周溶着が必要となり、多大な労力がかかっていた。防水シートを壁面の凹凸に対し、余裕のない状態で固定すると、覆工コンクリート打設時に突っ張った状態となり、天端部で空隙の発生や防水シートの破損が起きるため、凹凸に追随できる程度に余裕を持たせて固定する高度な熟練技能が必要とされた。
新システムでは、幅10.5メートルの長尺シートを採用し、施工現場での溶着作業が従来と比べて5分の1で済み、作業時間の短縮と同時に、防水に関わる品質も保持される。
作業手順は、まず長尺防水シートを蛇腹折りにしてロール状に巻き、作業台車の下部に設置する。ウインチでトンネル周方向に引き上げ、曲面形状の架台に仮置きして、釘打ち機による固定作業に合わせて、作業台車を前進させ、折りたたまれた防水シートを広げ、送風機で膨らませたバルーンで壁面に押し付けて自動展張をする仕組み。展張作業が自動化されることで、作業人員の縮減と作業時間の短縮も図れ、長尺のシートを使う効果と合わせると、作業効率が40〜50%向上するという。
熟練の技術を要していた凹凸への追随では、作業台車上に仮置きした展張前の防水シートに、特殊な引き込み装置で緩みを持たせ、張り付け時の余裕を形成する。この方法では、余裕量が管理できるため、防水シート材料のロス(注文長と施工長の差)の削減にもつながる。
新システムを模擬トンネル(延長約20メートル、断面積約70平方メートル)で適用した結果、作業性と要求品質が確保されていることを確認した。大林組では今後、施工する山岳トンネル工事に新システムを積極的に導入して、生産性向上・省人化、施工品質の確保を図り、熟練技能労働者の不足や高齢化に対応していくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.