西松建設と奥村組は、リース材として使われる一般的な防音扉を改造し、発破に伴う低周波音を効果的に低減する「改造型防音扉」を開発した。低周波音の減衰性能を向上すべく、防音扉の車両通行部のみを2層式とし、ローコスト・省スペース化も実現。山岳トンネル工事における周辺家屋に与える環境負荷を効率的に抑え込む。
西松建設と奥村組は2019年2月7日、山岳トンネル工事で使われる一般的な発破掘削防音扉の車両通行部を2層式に改造し、発破に伴う低周波音を効果的に低減する「改造型防音扉」を開発したことを発表した。
改造型防音扉は、低周波音の減衰性能の確保が困難な車両通行部に着目して開発。坑内側に車両通行部の扉を増設し、既存の車両通行部と側面・上面をコンクリート充填(じゅうてん)パネルで接続することで、車両通行部のみを2層式とした。これにより、坑内側の車両通行部が先に振動してエネルギーを損失させ、防音扉の減衰性能を担保する。
早くも、高知県発注の国道493号道路災害関連(小島トンネル)工事で性能検証を実施。コンクリート充填200mm(ミリ)の防音扉の坑内側に、同充填100mmとした車両通行部の扉部材を増設し、車両通行部のみ二層化する改造を施した。この結果、改造前に比べ低周波音圧レベルで10db(デシベル)、騒音レベルで7dbほど減衰性能が向上したという。同工事の施工は西松建設、関西新洋西山、東山建設、大宮建設の特定建設工事共同企業体。
山岳トンネル工事の発破掘削は、騒音・振動で周辺家屋に与える影響が大きく、多くの現場でさまざまな対策が講じられている。このうち発破音は、坑口に防音扉を設置することで影響を低減してきた。高い減衰性能を求められる現場では、扉部分にコンクリートを充填して材質をより硬く・重くするか、複数基の防音扉を設置することなどで対応する。しかし、前者はコストが増し、後者は扉間隔が30m(メートル)ほど必要で機械掘削の実施区間が長くなり、硬質な岩盤が坑口付近から出現すれば、工期と費用がかさむという現状があった。
改造型防音扉は、リース材として使われる一般的な防音扉の車両通行部のみを2層式としたことにより、ローコストに設置できる。防音扉1基分の省スペースで済み、組み立て時間も若干の追加で済む。その減衰性能は、防音扉2基設置時とほぼ同等。窓ガラスや建具のガタつきを引き起こす10Hz以下の超低周波音に対して、高い減衰性能を発揮する。
両社では改造型防音扉について、今後は発破掘削を実施する山岳トンネル現場へ積極的に導入提案し、周辺家屋に与える環境負荷の低減に努めていくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.