清水建設は、ダムコンクリート自動打設システムを初適用した岩手県盛岡市内の「簗川ダム建設工事」で、ダムの堤体を構築するコンクリートの打設工事が当初の予定よりも早まり2019年7月に完了することを明らかにした。
清水建設がJVのメイン企業となり、岩手県盛岡市内で進めている簗川ダム建設工事で、ダムの堤体を構築するコンクリートの打設工事が2019年7月末に完了する見通しとなった。
同工事での堤体コンクリートの総打設量は23万立法メートルで、2019年6月現在までの打設量は22万1000立方メートル、進捗率は95%に達した。このうち3万立方メートルの打設には、独自開発の「ダムコンクリート自動打設システム」が初適用された。
簗川ダムは、盛岡地区東部における洪水・渇水被害の防止を目的に計画され、岩手県盛岡広域振興局が発注し、清水建設、鴻池組、平野組の構成企業から成るJVが受注した。ダムの規模は、堤高77.2メートル、堤頂長249メートル、堤体積23万立法メートル、総貯水容量1910万立法メートル。受注金額は約156億円で、工期は2014年12月〜2021年3月の76カ月。
このうち、堤体コンクリートの打設工事は2017年4月に着手し、2019年11月までを予定していたが、施工の合理化などにより、打設工期が4カ月も短縮された。
具体的には、堤体コンクリートの打設で、ICTを活用して、購入骨材の貯蔵管理をはじめ、夏季と厳寒期の温度差によるひび割れ防止のための骨材の冷却・加温管理、堤体の内外温度差管理、打設時の締め固め管理などに対応できるシステムをそれぞれ確立。設計段階から予定されていたプレキャスト監査廊に加え、プレキャスト部材を随所に採用して省人化を図ったという。
一方で、コンクリートの製造・運搬・打設を繰り返し実行する打設作業で導入したのがダムコンクリート自動打設システム。2018年4月のシステム実装後、同年9月から試験適用を開始し、冬期の休止期間を経て、2019年4月から本格適用。打設作業のサイクルタイムで約10%の短縮が実現した。
自動化の流れとしては、最初に施工管理者がコンクリートバケット(鋼製容器)の運搬先となる打設位置の三次元座標や投入するコンクリートの配合種別のデータを入力。作業開始を指示すると、コンクリート製造設備バッチャープラントが稼働して、コンクリート配合種別に応じた骨材・セメント・水などの材料計量、練混ぜ、トランスファーカ(運搬台車)への積載を自動的に行う。
続いて、ダムコンクリートを運搬する機械トランスファーカが、バケット位置まで移動し、コンクリートをバケットに積み替える。最後に、軌索式ケーブルクレーンがバケットを打設位置まで運び、コンクリートを投下。この一連の作業が全自動で連続的に実行される仕組みだ。
清水建設は、無事故・無災害で2021年3月の簗川ダム建設工事の竣工を目指すとしている。
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