大林組は、古河ロックドリルと共同で、山岳トンネル掘削時の支保部材となる吹付けコンクリートの施工において、技能の熟練度に頼らない簡易な操作で操作可能な新型の「吹付け機」を開発した。今後は工場内での動作確認と試験施工を経て、実際のトンネル現場に適用する。
大林組は、古河ロックドリルと共同で、山岳トンネル掘削時の支保部材である吹付けコンクリートの施工において、簡易な操作で最適な吹付け位置を維持し、高品質な施工を可能とする吹付け機を開発した。
山岳トンネル工事では、1回の掘削ごとに露出する奥行1m(メートル)程度のアーチ型の岩盤面に、コンクリートを吹付けて支保部材としている。吹き付けの際に、アーム先端部のノズル位置が不適切な場合は、岩盤面に対して正しい向きや離隔距離を保てず、仕上がり面の平滑性不良や支保工背面の充てん不足といった施工品質の低下を招いてしまう。さらに岩盤面に付着しないで落下するコンクリート(リバウンド)の増大や粉じんをまき散らすことで、作業環境を悪化させるリスクもあった。
こうした事態を防ぐため、重機オペレーターには、ノズルを断続的に首振りさせつつ、施工する岩盤面に対して最適な軌道で移動させる技術が必要となる。しかし、従来の吹付け機では、アームの旋回などに伴い、先端部で弧を描くように動こうとするノズルを正しい位置から外れないように、素早く手動でアームを伸縮させる操作が要求されるが、首振り操作を行いつつ、アームの旋回・伸縮を素早く正確に行うには、高度な熟練技能が求められていた。
また、近年は技能労働者の高齢化などから、熟練オペレーターそのものが不足し、経験の浅い操縦者によって生じるさまざまなリスクを回避するため、技能の熟練度に依存しない、簡易な操作の吹付け機のニーズは根強くあった。
こうしたニーズを受け、大林組と古河ロックドリルは、アームの旋回などに対応して伸縮動作を自動化し、操作を簡易化した新たな吹付け機を開発。新型機は、ノズルに対してアームが自動で伸縮することで、ノズルを常にトンネル切羽鏡面から一定の距離にある「仮想の平面上」に保つ。ノズルが弧を描かずに、掘削面に対して並行で動くため、施工範囲から外れることがない。
操作が容易になったことで、作業効率の向上につながり、作業時間の削減が見込まれるとともに、短時間で操作方法を習得できるため、熟練オペレーター不足の問題解決にも期待ができる。
さらに、ノズルを常に最適な位置に保持することで、仕上がり面の平滑性など施工品質も向上。他にも、リバウンドの減少による材料コストの抑制に加え、粉じん発生量の低減による坑内環境の改善も見込める。
大林組では、古河ロックドリルの工場内での動作確認と試験施工を行い、近々実際のトンネル現場で新型機の有効性を確認するという。
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