鹿島建設は、2014年に積水成型工業、東京大学石田哲也教授と共同開発したコンクリートの表層品質を向上させる「美(うつく)シール工法」で使用する高撥水性特殊シート「美シート」を、型枠材に自動で貼り付ける装置を開発した。
鹿島建設は、コンクリートの表層品質を向上させる「美(うつく)シール工法」の効率化と省人化を目指し、同工法で使用する高撥水性特殊シート「美シート」を型枠材に自動で貼り付ける専用装置を開発した。この装置を使えば、これまで2人必要だった作業員も1人で済み、約6割の作業時間が短縮される。
美シール工法は、コンクリートの表面を緻密にすることで高品質・高耐久化を実現する養生技術。これまでに、東北復興道路の高架橋や港内工事の橋台/橋脚に適用されている。
同工法は、あらかじめ高撥水性シート「美シート」を貼り付けた型枠に、コンクリートを打設することで、コンクリ表面の気泡が大幅に低減。シートを貼ることで、表面側への水分の移動が抑制され、型枠との間に水膜ができず、水分がコンクリート内部にとどまる。この結果、コンクリート自体が持っている水分で、自らを保水養生する形になり、表面も潤いを保持する。脱型後は、シートがコンクリート側に残置されるため、表面を一度も外気にさらすことなく、長期間にわたって湿潤状態を保つ。仕上がりは、表面が色つやに極めて優れて平滑で、緻密になる。
これまで、美シートを型枠材に貼り付ける作業は、2人以上の作業員が必要とされ、さらにシワや気泡が無い様にきれいに貼り付けるためには一定の技量が求められていた。そのため、美シール工法の普及には、型枠材にシートを貼り付ける作業の省人化と、時間短縮、仕上がりのばらつきをなくすことが課題だった。
鹿島建設では、「ひとりで」「早く」「きれいに」をコンセプトに、貼り付け作業を自動化する装置を開発。自動化装置を用いることで、1人で短時間にシワや気泡の無い高品質な貼り付けができるようになり、大幅なコスト削減がもたらされる。
自動貼付装置の構成は、門型フレーム、スクレーパ、シートカッター、型枠クランプ。作業手順はまず、型枠材を所定の位置に設置し、クランプで固定。PC画面上で、貼り付ける長さを入力し、スタートボタンを押す。門型フレームが横移動しながらシートを引き出し、型枠材にスクレーパで貼り付け、所定の位置まで貼り終わるとシートカッターにより自動でカットされ、貼り付けが完了する。
特長としては、4トントラックによる運搬と屋外での使用が可能なことがある。1人で作業が完了し、作業方法も簡易なため、準備から、運搬、シート貼り付け、カットまでの全工程の作業時間は、従来方法に比べて約6割削減。人力では26分を要していたが、およそ11分で済むという(型枠3.24平方メートル当たり)。
シートを貼り付けた後の仕上がりも、シワや気泡がなく、熟練技能者が貼り付けたものと同水準の施工品質が得られる。型枠材は、幅600ミリまたは900ミリの桟木加工された化粧合板で、最長3600ミリまでの型枠材に対して、任意の長さにシートを貼り付けることが可能だ。
また、万一のトラブルに備えて、機械を緊急停止させる安全装置「ライトカーテン」も装備している。
鹿島建設では、貼り付けが自動化されたことで、美シール工法をより積極的に展開していき、橋梁(きょうりょう)やボックスカルバートなど、各種コンクリート構造物のさらなる品質向上と長寿命化につなげていくとしている。
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