淺沼組は、熟練技能者のワザやノウハウをデジタルデータとしてアーカイブし、次世代の建設生産管理に生かすことを目指した「Ai-MAP SYSTEM」の構築に取り組んでいる。
淺沼組は、独自に進めているIT化による生産性向上の取り組み、匠のアーカイブシステム「Ai-MAP SYSTEM(アイマップシステム)」を「建設・測量生産性向上展2019」(会期2019年5月22〜24日、幕張メッセ)で紹介した。
Ai-MAP SYSTEMは、AIとIoTを活用することで、匠(建設技能者)が保有する熟練技能をアーカイブ化と見える化させ、建設業の生産性向上につなげる淺沼組が独自開発したシステム。
全ての生産活動の要となる古くから培われてきた勘やコツなどの熟練技能を、ヘルメット型ロガー(GPSとセンサー、カメラを取り付けたヘルメット)「Ai-LOGGERS」で計測して匠の技を可視化する。Ai-LOGGERSは、GPSによる位置情報と点群データを取得し、屋内外や地域を問わずさまざまなケースで、作業員の動態情報を得ることができる。生産管理の現場以外にも、管理者の意思決定のスピード化や未習熟者の教育訓練ツールとしての利用も見込む。
Ai-LOGGERSはAi-MAP SYSTEMを構成する一つの技術だが、全体としてはクラウドサーバベースを中心に据えており、そこから枝葉の様にAIやIoTを活用した複数の新技術で構成されている。主な技術としては、作業者の動線や稼働状況を見える化する「Ai-SYS NEXT」、熟練者の五感を動作/音声/色彩/電波で再現するセンシングシステム「Ai-LABOS」、技能の定量化とデータ活用を図った位置情報とリンクさせた「Ai-MAPS」などがある。
Ai-MAP SYSTEMの構想としては、まず熟練技能者が施工する際の時間/位置/映像をモニタリングして、勘やコツを定量化。このデータをクラウドサーバに記録/保存し、動態解析にかけて、3次元データやグラフなどに出力する。気付きや意思決定に活用することで、全体としての生産性向上につなげる。これを繰り返すことで、経験がサーバに蓄積されていく仕組みだ。
熟練技能者の動態解析は、Ai-LOGGERSに備えられたGPS、ウェアラブルカメラ、複合センサーで、位置情報、時間、点群データを取得。このデータを、安全行動のポイントや作業のコツをつかむ“技能動作”、安全・品質の要因となる“作業動線”、統計手法を転用したシミュレーションで最適なリソースを配分する“生産能力”の3つの解析にかける。
導入する効果は、技能を可視化することで、施工方法の標準化や次の担い手への技能継承につながることが挙げられる。「Ai-LEARN」では、Ai-LOGGERSとVR/ARを連携させ、体感型の教育訓練を行っている。他にも、生産予測によって生産管理でのエラー防止や効率的な生産管理体制を確保できるといったメリットがある。
Ai-MAP SYSTEMを推進している新技術事業化推進室室長の山本均氏は、「2019年4月に同推進室を設置し、これまで培ってきたソリューションを水平展開することになった。通信システム『Ai-TEC』は、国土交通省のPRISM(建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト)に、GPSヘルメットによる稼働状況計測Ai-LOGGERSおよびAi-SYS NEXTとともに採択され、試行の結果、高い評価を受けた」と話す。
Ai-TECは、スマートフォンやタブレットにインストールした専用アプリ上で、現場と管理事務所などをライブ映像でつなぐ通信システム。映像をコミュニケーションツールとして活用し、ライブ映像での会話中に写真を撮ることができ、その写真に位置情報がひも付けられているため、クラウド上に保存されれば、作業履歴の代わりにもなる。
山本氏によれば、現在は同時通話の音声データをAI解析にかけるだけで、自動的に議事録が作成される「Ai-KNOCKS」の実用化も進められているという。
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