日本ドローンコンソーシアム(JDC)の野波健蔵会長(千葉大学名誉教授)は、「第5回国際ドローン展」で特別講演を行った。野波会長は、1998年から完全自律型ドローンのマルチコプター(UAV)開発に携わり、大学発ベンチャー自律制御システム研究所(ACSL)を立ち上げるなど、国内におけるドローン界の第一人者。これからのドローンには何が必要か、また、土木・建築領域で活用が拡大していくにはどんなことが壁になるのかを野波会長の講演から読み解く。
日本ドローンコンソーシアムで会長を務める野波健蔵氏は、ドローンの産業利用にスポットを当てた「第5回国際ドローン展」(会期2019年4月17〜19日、幕張メッセ)で特別講演を行った。産業用ドローンを取り巻く最近の状況を振り返りながら、「機体そのものが目覚ましい勢いで普及している今、ソフトウェアを開発する人材の確保・育成が新たな世界的な課題として浮上している」と提言した。
講演は、ドローン産業の将来推計、業態別の動向、今後の展望――を軸に展開。野波氏は、ドローン産業を取り巻く近年の状況を解説しながら、ドローン産業界のニーズが「ソフトウェアを開発する人材の確保・育成に移りつつある」と指摘した。
まずドローン産業全体の将来展望は、グローバルで現在の約7500億円から、2020年台後半にはおよそ18倍の約14兆円になるとした。内訳について野波氏は、「農業は飽和していく傾向にある。比較的安定的に推移し約13倍の3.6兆円規模の見込み」としながら一方で、「インフラ維持管理が最も伸びる。約50倍の5兆円規模に膨らむ可能性がある」と予測。
物流業界については「“空の産業革命”とも呼ばれ最もポテンシャルが高い」と期待を掛けながら、「現在の600億円から、約23倍の1.4兆円となる見通し。その成長過程では、レギュレーションがネックになり、DID(Densely Inhabited District:人口集中地区)での飛行など、今後の法制化が極めて重要になってくる」と解説。
国内市場に目を転じれば、2019年度は、ドローン産業全体で約1000億円のマーケット。2020年度はその倍の約2000億円に拡大する予想だ。なかでも、「フライヤースクールなどドローン関連のサービス産業が今後、最も伸びしろが大きい。利用シーンでは、ホビー目的が依然として9割を占め、産業目的は1割程度にとどまっている」という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.